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2017/06/28 | KAJIMOTO音楽日記

●レナード・スラットキン指揮デトロイト交響楽団、来日間近!(1)―― スラットキンにインタビューしました。


デトロイト交響楽団・・・ビッグ5と言われるシカゴ響やフィラデルフィア管、ニューヨーク・フィルなど、または西海岸のロサンジェルス・フィルなどの活躍に比べると活動が地味と思われるかもしれない楽団ではありますが、どっこい、昔から名匠と呼ばれる指揮者たち―― アンタル・ドラティやネーメ・ヤルヴィらが音楽監督を務めて、精度確かな演奏、録音を残してきた名オーケストラです。
(さすが自動車産業という精巧な仕事を生業とする都市!?)

その系譜は現在にも続き、まさに現代を代表する「名匠」「オーケストラ・ビルダー」レナード・スラットキンによって、そうした楽団の在りようは健在。

久しぶりの・・・それも初の本格的日本ツアーで、小曽根真が弾く「ラプソディ・イン・ブルー」を含む、アメリカを代表する作品たちを彼らによって聴けることや、
「国際音楽祭NIPPON」(諏訪内晶子・音楽監督)の一環として、諏訪内とともに近現代の作品をやってくれることは、音楽ファンにとって実に貴重な機会だと思っています。

7月上旬の来日はまもなくです。


今回はまず、音楽監督スラットキンのインタビューから。



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――マエストロは色々なオーケストラの首席指揮者や音楽監督を務め、また数えきれないほどのオーケストラに客演しています。そうした中、デトロイト響との共同作業についてぜひお話ください。
ファンの多くはデトロイト響を、「昔の」録音でしか知りません。来日公演も1度だけ、それも限られた場所で行われただけですから。


 じつは、ナクソス・レーベルからリリースされている多くのCDや、自主レーベル「ライヴ・フロム・オーケストラ・ホール」でここ数年に楽団が発表し続けてきたレコーディングを通して、「現在の」デトロイト響の演奏に触れていただくことができます。さらにデトロイト響のすべての定期公演は、ウェブサイト「dso.org/live」上でライヴ配信されています。

 今シーズンはわたしが音楽監督に就任してから9年目にあたります。今日まで楽団と力を合わせ、他に類をみないサウンドを育んできたと自負しています。わたしたちが本拠としているコンサートホールは世界最高峰のクオリティを誇り、この恵まれた演奏環境が「デトロイト響サウンド」にさらなる独自性を授けてくれています。
 具体的にご説明するなら、じつに瑞々しい演奏を聴かせる弦楽器セクションは、驚くべき感性と、幅広い強弱表現を持ち味としています。一方、木管・金管セクションは若手とベテランの奏者がバランスよく揃っており、際立ったソロの腕前と、音色のニュアンスの絶妙なコントロールが強みです。打楽器セクションにはただただ圧倒されます。



――すこし視点をひいて、マエストロの故国アメリカのオーケストラは、昨年一緒に来たリヨン管、または客演に来たN響など、他国のオーケストラとどんなところに違いや長所を感じますか?


 昨今、オーケストラ界には大きな変化が起きています。アメリカやヨーロッパの楽団をよく眺めてみると、じつにさまざまな出自のメンバーたちから構成されている「国際的な」アンサンブルであることがわかります。これは一部のオーケストラに難問を突き付けています。どこも似たようなサウンドを鳴らし始めているからです。

 デトロイト響の場合は、新入りの奏者たちが皆、長年このオーケストラで演奏してきた経験豊富なメンバーたちから指導を受けられるよう、体制が整っています。現在のデトロイト響のサウンドやキャラクターには、アメリカの由緒あるオーケストラならではのヴィルトゥオジティと、私の前任者ネーメ・ヤルヴィが楽団にもたらしたロシア楽派の特長が同居しています。ふたつの伝統が結びつき、デトロイト響特有のサウンドが生まれたと言えます。



――今回のツアー曲目は、アメリカの作品(ガーシュウィン、奥さまのマクティさん、バーバー、コルンゴルト、コープランド)がとても楽しみなほか、国際音楽祭NIPPONでの武満作品、そしてチャイコフスキーと幅広いです。きっと演奏によって差異や特徴がはっきり出てくるだろう、と期待しています。
 これらの曲目についてお話しください。

 日頃からできる限りアメリカの作品をプログラミングしています。おっしゃる通り今回の日本ツアーには、私がとりわけ「愛」している作品を携えていきます。まず、コープランドの交響曲第3番はおそらく、アメリカ人作曲家が手がけたもっとも卓越した交響曲であると思います。私にとっては、これまで何度も指揮してきた思い入れの深い作品です。今回はツアーに合わせて、ナクソス・レーベルからデトロイト響とのレコーディングもリリースされます。これは多くの方々の好奇心をくすぐると思いますが……わたしたちが演奏するのは「オリジナル版」です。つまり、バーンスタインが導入したカットは採用せず、全曲をお届けします。

 《ダブルプレー》はデトロイト響からの委嘱で、わたしの妻シンディ・マクティーが書き下ろした作品です。演奏時間は15分前後。チャールズ・アイヴズの作品《答えのない質問》からの引用が印象的で、後半ではジャズの要素も織り交ぜられています。ちなみに、何年も前になりますが、私はシンディが手掛けた短い楽曲《Circuits》をN響と演奏しています。チャイコフスキーの交響曲は、とにかく偉大な音楽であり、指揮・演奏するのが楽しいという純粋な理由から、わたしにとって常にお気に入りの一曲です。(1990年代のセントルイス響来日公演でも指揮)



――その中で、小曽根真さんとのガーシュウィン、諏訪内晶子さんとの武満、コルンゴルトがあります。
彼ら2人との共演についても、どんなことを楽しみにしていらっしゃいますか?

 かつてピアノでジャズを弾いていた私は、小曽根真さんを長年敬愛しています。小曽根さんとの共演を、今から心待ちにしています。彼の「鍵盤さばき」は、もはやレジェンダリー(伝説的)と呼べる域に達していると思います。《ラプソディ・イン・ブルー》を取り上げるときには毎回、どのような「新鮮さ」が作品にもたらされるのか、期待しながら指揮しています。
 諏訪内晶子さんとは何度も舞台でご一緒したことがあります。彼女は世界屈指のアーティストですし、コルンゴルトの協奏曲も真の傑作です。また、これまで武満徹の数々の作品を指揮してきましたので、今回、諏訪内さんとともに《遠い呼び声の彼方へ》を演奏できることが楽しみでなりません。


(聞き手: KAJIMOTO編集室)


*当インタビューの全文は、公演会場で販売されるプログラムに掲載されます。


■チケットのお申込みはこちらから
7月16日(日) 14:00 ザ・シンフォニーホール(大阪)
7月19日(水) 19:00 東京オペラシティ コンサートホール

7月17日(月・祝) 15:00 文京シビックホール
 

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