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2019/10/02 | 大切なお知らせ

■稀有なる大ソプラノ、ジェシー・ノーマンの訃報に寄せて


世界でも最高最大のソプラノの一人、ジェシー・ノーマンさんが9月30日に逝去されました。74歳でした。

ノーマンさんはアメリカのジョージア州オーガスタ生まれ。アメリカ国内で声楽を学び、1969年にはミュンヘン国際コンクールで優勝。同年にベルリン・ドイツ・オペラにおけるワーグナー《タンホイザー》のエリーザベト役でデビューして以来、世界中のオペラハウス、音楽祭などで超一流の指揮者やオーケストラから引っ張りだこ、主要音楽都市でのリサタル開催など、とどまるところを知らない活躍を続けました。

弊社が初めてノーマンさんを招聘したのは1985年です。この初来日は彼女の評判を裏付ける以上に空前の反響を呼び、大評論家の故・吉田秀和は当時の新聞紙上で「ジェシー・ノーマンという歌手はこれまでの経験を超えた桁外れの存在である。その歌から放射されてくるものは、大きさ、深さ、高さといった次元のどれかだけで言っても正確に言い現わせず、充分にとらえられない。彼女の歌は大自然の奥に秘められた泉から直接湧いてくるかのようだ。その意味で、この人は純粋に人間的存在でありながら、何か宗教的なものを思わせずにはおかない」と書きました。
ノーマンさんの歌を一度でも実演で聴いたことのある方には、実感をもって納得できる言葉ではないでしょうか?

こうした超絶的な歌を、彼女はヘンデルで、シューベルトで、ブラームス、マーラー、R.シュトラウスで歌い、特にスピリチュアル(黒人霊歌)ではそれは絶頂に達したと思います。会場が感動の坩堝と化す、あの瞬間は誰もが忘れられないものでしょう。
また、1995年の「ピエール・ブーレーズ・フェスティバルin TOKYO」で、特にブーレーズに請われて歌ったオーケストラ伴奏でのベルクの現代的な歌曲、そして2004年にやはり東京で行われたパリ・シャトレ座プロジェクトにおけるシェーンベルク「期待」とプーランク「声」の2つのモノ・オペラでは、ノーマンさんの底知れぬ表現力が遺憾なく発揮され、多くの聴衆を驚嘆させ、その心を別世界へと連れて行ってくれました。

こうして世界に、そして日本にも素晴らしい音楽を届けてくれたノーマンさんに深い感謝と追悼の意を表したいと思います。弊社としても長きにわたり、この偉大なソプラノを招聘することができたことを改めて感謝しております。

心からジェシー・ノーマンさんのご冥福をお祈り致します。


KAJIMOTO
 




1985年初来日時。隣は当時の弊社社長、故・梶本尚靖
 

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