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2019/05/02 | KAJIMOTO音楽日記

●ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019 直前連載 ――出演ア-ティストへ突撃インタビュ-!Vol.4 ジャン=クロ-ド・ペヌティエ(ピアノ)


いよいよ明日から、ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019(LFJ)が開幕します!!みなさん準備はよろしいですか?(^^)
出演ア-ティストへのインタビュ-、最後を飾るのはピアノの大家ジャン=クロ-ド・ペヌティエさん。

パリ国立音楽院卒。フォ-レ・コンク-ル優勝、ロン=ティボ-国際コンク-ル第2位。フォルテピアノ奏者、指揮者、作曲家、教師としても活躍。パリ管、シュタ-ツカペレ・ドレスデン、イギリス室内管などと共演。
LFJではすっかりおなじみのベテランピアニストです。

音楽ライタ-の高坂はる香さんに、ペヌティエさんの特別な音の秘密をインタビュ-していただきました。

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◆ジャン=クロ-ド・ペヌティエさん インタビュ-



-ピアニストにとって自分の音を持つということは大切だと思いますが、ぺヌティエさんはどのようにしてあの特別な音を確立されたのでしょうか?

 私は10歳の頃から、あなたには音があると言われてきました。自分がそれをどうやって獲得したのかはわかりません。いずれにしても、インスピレ-ションが外から来るのを待っていては何も起きません。大切なのは、欲求に基づいて表現するということ。芸術分野全般において共通していると思います。自分の意図や内にあるものに耳を傾ければ、それは実現すると思います。そのうえで、素材、作品によって音のバランスやペダルで調整をしていきます。

-ナントのリサイタルでモ-ツァルトを聴きましたが、次々と音の表情が変わって、いろいろな人物が出てくるようでした。モ-ツァルトの音を鳴らす上で大事にしていることはなんでしょうか。

 モ-ツァルトの時代、ピアノはまだ若い楽器でした。モ-ツァルトは、ピアノを弾くにあたって二つのインスピレ-ションの源を持っていたと思います。一つは、ピアノを弾くこと自体から見出す楽しみや喜び。もう一つは声の表現から得る刺激です。彼は、ピアノが人格を持つということを知っていました。その人格にはアイデンティティがあり、カメレオンのように化けることができます。そこで、モ-ツァルトはピアノに声や弦楽器、オ-ケストラの表現を暗示させることを、早くから行っていたのだと思います。

-「きらきら星変奏曲」とイ短調のソナタの間で、ピアノの周りをぐるっと一周歩いてまわっていらっしゃいました。あれには何の意味があったのですか?

 あぁ(笑)、昨日のホ-ルは曲の間で出入りすることが難しい場所だったけれど、変奏曲を弾いた後、短調のソナタに入る前に一息つきたかったので。
 子供のころずっとピアノを弾いていると、母からよく、「ちょっと休憩しなさい。ピアノの周りをまわってみたら?」と言われたんです。それを思い出して、やってみたらおもしろいかなと思って。何かのセレモニ-のように見えて、謎めいた感じがしたでしょう(笑)?

-はい、見事に謎のセレモニ-のように見えました。東京のLFJではされたことはないですよね?

 まだやったことはありません。東京の会場では、舞台袖に入ることができるからね。でも、もしよろしければ東京でもやりますよ(笑)。

-ぺヌティエさんは、どんなお子さんだったのですか?

 わからないなぁ…どうだった?(隣に座っていた奥様に尋ねるぺヌティエさん)妻とは、ピアノのレッスンで出会ったんです。6、7歳の頃に。
 (奥様):かっこよかったですよ! クラスで一番才能がありました。

-音楽家として活動するなかで、もっとも大切にしてきたことはなんでしょうか?

 音楽作品は人間の内面を表すものですから、そこには聴く人が共感できるものがあるはずです。私はピアニストとして、感情を伝えるということ、そして、人が美しいものを見たいという望み、幸せや苦しみを表出したいという望みを満たすことを大切にしてきました。美しい曲を聴くと、人は自分が開いていくことに気づき、奥にあるものと交信することができます。

-ペヌティエさんのような演奏家は、長い修行と練習で掴んだそういう音楽の美しさ、神とのつながりを、練習もしていない私たち聴き手と分かち合ってくれるのですよね…。

 いいんですよ(笑)、私たちは聴く人のために鍛錬しているのですからね。長い時間をかけて作品の中に入り、その曲が言いたいことを理解したら、今度はそれを何も知らない人たちに、よくわかるように、明確に伝えることが大切なのです。
 


(文:高坂はる香)





※出演予定公演は完売いたしました。
 

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