もう二晩寝ればラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019(LFJ)!
3人目の出演ア-ティストインタビュ-に答えてくれたのは、ピアノのマリ-=アンジュ・グッチさん。
早熟の天才としてフランスで話題沸騰中のピアニスト。深い知的好奇心が持ち味。弱冠16歳でパリ国立音楽院からピアノ演奏の修士号を授与され、ウィ-ン音楽大学で指揮も学びました。2015年、マッケンジ-国際ピアノ・コンク-ル優勝。現在、パリ国立音楽院とパリ第4大学(ソルボンヌ)で更なる勉学に励んでいます。
昨年のLFJで大きな話題となった、他とはひと味違う才をもつア-ティストです。
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◆マリ-=アンジュ・グッチさん インタビュ-
-リサイタルのプログラム、どれもユニ-クでした。
どのプログラムにも、今年のテ-マ「ボヤ-ジュ」を感じていただける物語を込めました。「旅」は私の心にとても近いテ-マです。私はアルバニアで生まれ育ち、フランスに渡り、ウィ-ンやニュ-ヨ-クでも勉強しました。旅は私の人生を変え、感情に影響を与えました。
あらゆる時代の旅行者でもあった偉大な作曲家たちは、音楽を通して自分の経験を伝えています。一部の作品には、旅の日記のようなものもあります。
-グッチさんの音楽との最初の出会いは、どのようなものでしたか?
音楽も芸術も、生活の一部として存在するものでした。私が子供の頃、アルバニアは内戦状態でした。日々の暮らしには緊張感があり、人々は貧しく、健康状態も悪かった。そんな中、音楽は、現実を忘れて束の間逃避行できる一つの方法でした。
家族にプロの音楽家はいませんが、みんな音楽が大好きで、クラシックに限らずあらゆる音楽を聴きました。私は演奏家を目指そうと思ったことはありませんが、ピアノのそばで時間を過ごしていたら、自然とその道が向こうからやってきたという感覚です。
-子供の頃から、音楽がこの世に存在する意義を体感して育ったのですね。
そうかもしれません。私にとって、音楽はコンサ-トに行って聴くものだとか、仕事にするものだとか、そういう考えはありませんでした。音楽は、人間の魂の具現化であり、言語や文化の境界を超えて、人が魂同士で対話するためのものだと思っていました。
-グッチさんは、オンド・マルトノも演奏されるのですよね。ナントのLFJでは公演もありました。
はい、東京でもやりたいと思って、マルタンさんが聴きにきてくれていたから反応を探ってみたんだけれど、どうでしょうか…(笑)。
オンド・マルトノには、ミュライユの作品を通じて出会いました。彼のピアノ作品のユニ-クなスタイルに興味を持って調べて行ったら、彼自身がオンド・マルトノ奏者で、レパ-トリ-を広げようとしていたことを知りました。
そんな中、パリ音楽院にオンド・マルトノのクラスがあるのを知って扉を叩いたのが始まりで、以来勉強を続けています。表現の可能性を持ち、想像力を開いてくれるすばらしい楽器です。音の生まれるところにダイレクトにアクセスできるので、鍵盤楽器とは違ったおもしろさがあります。
私はオルガンも演奏しますが、それぞれの演奏経験は互いに影響を与え、一つを学んでいるだけではわからない発見をもたらしてくれます。オンド・マルトノを発明したモ-リス・マルトノは、エンジニアであり、チェリストだったので、私はチェロも勉強してみました。そこから発見することもありました。
-ところで、初来日は昨年のLFJだそうですね。日本の印象はいかがでしたか?
とてもショックを受けました。もちろん、いい意味で! 東京は、人々がとてもオ-プンで、新しい音楽を求めていると感じました。日本は私にとって、発見の宝庫のような存在。文化や習慣をもっと知りたいです。
-グッチさんは七ヶ国語を話し、日本語も少しできるそうですね。なぜ勉強しようと思ったのですか?
LFJで日本に行くことが決まった去年の3月に、勉強しようと思いました。
私は、言語を知らないということは、文化を知る上でバリアになると思っています。少しでも理解できると、コミュニケ-ションをとり、何かを知るための扉を開くことができます。私が話せるのはヨ-ロッパ系の言語ばかりでしたから、アジアの言葉を学ぶことは大きな一歩となりました。
-最後に、公演を楽しみにしているみなさんにメッセ-ジをお願いします。
音楽は、人間が普遍的に求めるものだと思います。さまざまな芸術の中でも、特に音楽は、直接的に人の心に触れ、情熱を伝えるものです。演奏会では、バリアを作らず、心を開いて、私たちの音楽から何かを見出すこと、そして驚きやショックを受ける現象を受け入れてください。もし好きじゃないと思っても、心を開くことで、何かを発見する一歩を踏み出せるはずです。
前回日本を訪れた際のみなさんのあたたかい支えに、心から感謝しています。また演奏できることを楽しみにしています。
(文:高坂はる香)
■LFJ出演公演
公演番号:313
コスモポリタン・リストによる2大協奏曲
https://www.lfj.jp/lfj_2019/performance/timetable/detail/313_modal.html
※その他の出演予定公演は完売いたしました。