「皇帝」などと些か大げさな表現をしてしまいましたが、昨秋からニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)の音楽監督にも就任し、全米屈指のオーケストラ、フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督と兼任するヤニック・ネゼ=セガン・・・オペラとシンフォニーの両輪でのこのポスト。これはまさにあのレヴァインの後を継ぎ、アメリカ音楽界のトップとなったと言っても過言ではないのでは?
そしてネゼ=セガンはフィラデルフィア管弦楽団と、今秋11月に来日公演を行います。
カジモト・イープラス会員限定先行受付は4/10(水)から!
特設サイト http://www.kajimotomusic.com/philorch2019/
[ヤニック・ネゼ=セガン指揮 フィラデルフィア管弦楽団]
11月4日(月・祝)16時 サントリーホール
プロコフィエフ: ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 op.63
(Vn: リサ・バティアシュヴィリ)
マーラー: 交響曲第5番 嬰ハ短調
11月5日(火)19時 東京芸術劇場コンサートホール
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
(Pf: ハオチェン・チャン)
ドヴォルザーク: 交響曲第9番 ホ短調 op.95「新世界から」
(両日とも)
S¥32,000 A¥27,000 B¥22,000 C¥17,000 D¥13,000
プラチナ券¥37,000
カジモト・イープラス会員限定先行受付
4/10(水) 12:00 ~ 4/13(土) 18:00 ●お申し込み
一般発売
4/20(土) 10:00 ~ ●お申し込み
フィラデルフィア管弦楽団は1900年創設。“銀髪”レオポルド・ストコフスキーが音楽監督を務めていた20世紀前半、楽団は「打倒ニューヨーク・フィル」を胸に秘め、より良いサウンド作りのため、楽器の配置の工夫をしたり、フランス人の演奏家を加えたり、同時代の作曲家の新作を積極的に初演したりと(同地に住んでいたラフマニノフ「交響的舞曲」など)、ありとあらゆることを試みました。これが後に「フィラデルフィア・サウンド」となる原点と言えるでしょう。
それを引き継ぎ45年間もフィラデルフィア管を率いたユージン・オーマンディは、ヴァイオリニスト出身であったため、より美しい音を出すボウイングなど弾き方の具体的な工夫を徹底、レコーディングを通じての集中した音作りのプロセスなどを通して“艶出しワックスをコートしたような”この世に2つとない「華麗なるフィラデルフィア・サウンド」が完成したのです。お互いの丁寧な職人作業の結実。
これは名技性といい豊麗さといい、欧州のコンセルトヘボウ管と双璧と称えられ、その後リッカルド・ムーティ、ヴォルフガング・サヴァリッシュらが損ねることなくその美質を継承、自分たちの個性を加味していったのでした。
***
この名門オーケストラは21世紀に入り、一時、存続の危機を迎えました。しかし彼らはこれを乗り越えます。2012年から音楽監督となったヤニック・ネゼ=セガンが救世主となったのです。当時ドゥダメルやネルソンス、ソヒエフらと共に指揮界にめきめき台頭、小柄ながら敏捷、豊かなエネルギーを迸らせ、音楽から美麗でしなやか、活気あるドラマを生み出すネゼ=セガンの才能は、オーケストラのモチベーションを立て直し、その持ち前のサウンドを完全に蘇らせ、新たな黄金時代を築くことになります。それはこれまでの来日公演での演奏や注目の録音の数々が証明しています。
前回2016年の来日時に演奏した、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を今でも思い出します。この演奏は賛否・好き嫌いが随分別れたものですが、ブルックナーの音楽のもつ厚みや広大深遠さが今のフィラデルフィア管のもつサウンドと矛盾せず、むしろそれが強力な武器に。作曲家の苦悩や巨大な高揚が光り輝く美麗な音に彩られて、逆に孤高さが増す、といったなかなか聴くことができない演奏だったと思います。現代に響くブルックナー像として、こういう在りようも可能なのですね。
そのネゼ=セガンは意気揚々、先に書いたように昨秋METの音楽監督となり、最初に振った演目が、現代最高のソプラノの一人ディアナ・ダムラウを主役としたヴェルディ「椿姫」。
これを私は先日METライブビューイングで鑑賞しましたが、就任初めということで並々ならぬ気合に充ちた上演でした。細部から全体まで、すべてにおいてブラッシュ・アップし作品像まで見直さなければならないような。
幕間のミニ・ドキュメンタリーで、リハーサルの様子が見られ、ダムラウとのピアノ・リハにおいてネゼ=セガンがある箇所で1回止めます。そして「この音からこの音に移るように書かれているのは、ヴィオレッタの感情の揺れなんだ。だから普段はこう歌われているかもしれないけど、ここはこういうニュアンスでやろう」といった微細な指示をします。ダムラウは「なるほど。OK!」と再びそこを歌うのですが、明らかに前の時と比べて「音楽が増えたように」ぐっと密度が増し、説得力が増して響きます。ダムラウは「こういうやり取りって、最近の指揮者とはなかなかできないんだけど、ヤニックとはすごくオープンにディスカションできるの。彼はそういう数少ない一人で、弟みたいに思えるわ」といったことを答えていました・・・。
フィラデルフィア管の話から少しそれてしまいましたが、今回のツアーで注目すべきは、世界中で放送されたベルリン・フィルのワルトビューネ・コンサートで「第8交響曲」を、METでは「ルサルカ」を指揮して、ネゼ=セガンとの自然な相性を印象付けたドヴォルザーク(「新世界交響曲」)の演奏。
そして同じボヘミアの作曲家マーラー「第5交響曲」(CDで聴くバイエルン放送響との「巨人」も見事でした・・・)。
そして楽団ゆかりのラフマニノフによるピアノ協奏曲のソロを弾く、中国生まれ、地元フィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、ヴァン・クライバーン国際コンクールで優勝したハオチェン・チャン。
また!リサ・バティアシュヴィリとのコンビの録音が数々の国際的な賞をとった、あの驚異的なプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲が実演で聴けるという絶好の機会です。
すべてにおいて今のフィラデルフィア管の美点が活きるはずです。最高の名器と、それを全開にしてしなやかで自然なドラマを生み出す若き天才指揮者の名コンビ。
どうぞご期待ください!
(A)
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