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2017/12/13 | ニュース

◆尾高忠明、BBCウェールズ・ナショナル管デビュー30周年、70歳記念コンサートが本拠地ホディノット・ホールで開催!





 指揮者、尾高忠明のBBCウェールズ・ナショナル管(BBC National Orchestra of Wales)とのデビュー30周年を祝うコンサートが2017年12月11日、カーディフのホディノット・ホール(ウェールズ・ミレニアム・センター内にあるBBCナショナル・ウェールズ管の本拠地)で開かれた。
 尾高は1987年にBBCナショナル・ウェールズ管の首席指揮者に就任。1995年までその任を8年間務め、その間にオーケストラを拡充、2度の来日公演を含む数々のツアーを率い、オーケストラの知名度を高めた。英『サンデー・タイムズ』紙は、「オーケストラとの8年間、彼はウェールズで奇跡を行った」と書いた。首席ポストを退任してからも挂冠指揮者として毎シーズン招かれ、長期にわたって実りある関係を築いてきた。楽員および地元のファンからの信頼も厚い。

 今回のコンサートは、尾高のデビュー30周年に加え、彼の70歳の誕生日(尾高は先月70歳を迎えた)、さらにはオーケストラの設立90周年のシーズン(1928年設立)という3つのアニヴァーサリーを同時に祝うものとなった。
 このコンサートで尾高が指揮したのは、オール・エルガーのプログラム。彼は英国の作曲家エドワード・エルガーの指揮にとりわけ定評があり(2000年にはエルガー協会よりエルガー・メダルを受賞)、今回も魅力的な演奏を聴かせた。
 冒頭の演奏会用序曲「コケイン」は大都会ロンドンを行き交う人々を描いた活気に満ちた曲で、金管楽器を中心にエネルギッシュな演奏で楽しませた。続いてオーケストラ付き連作歌曲集「海の絵」では、コントラルトのクローディア・ハックルを独唱に迎え、静かな海から荒々しい海までさまざまな海の表情を、歌とオーケストラが一体となって情感たっぷりと表現した。
 後半はエルガーの最初期の佳作「弦楽のためのセレナード」で始まり、とりわけ第2楽章ではエルガー特有のノスタルジアをしっとりと聴かせた。最後は、エルガーがイタリアの陽光を描いた「南国にて」。これはリヒャルト・シュトラウスの交響詩を思わせる華やかなシンフォニックな作品。尾高はオーケストラから色彩感たっぷりの力強いサウンドを引き出し、しかも作品のクライマックスに向けて曲を盛り上げていく手腕は見事だった。

 公演が行なわれたホディノット・ホールには地元の聴衆が多く集まり、とても暖かい雰囲気に包まれた。またコンサートはBBC Radio3局で生中継された(ネットで30日間聴くことができる)。コンサート後、オーケストラのメンバーより長年の功績への感謝をこめて、尾高に記念品とカードが贈呈された。

それに先立ち12月7日にはSt.デイヴィッド・ホールで行われた同楽団の定期演奏会に登場。武満徹の「トゥイル・バイ・トワイライト」、エルガーのチェロ協奏曲を長年の盟友スティーヴン・イッサーリスと、メインに尾高の得意とするラフマニノフの交響曲第2番を指揮、アンコールに芥川也寸志の「トリプティ―ク」を取り上げ、満場の聴衆を沸かせた。まさに尾高の面目躍如たるコンサートとなった。

今後も尾高とオーケストラはますます円熟した演奏を聴かせてくれることだろう。


取材協力:後藤菜穂子(音楽学/ロンドン在住)




尾高忠明指揮 BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団

定期演奏会
12/7(木)19:30開演 St,デイヴィッド・ホール
武満徹:トゥイル・バイ・トワイライト
エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調op.85(チェロ:スティーヴン・イッサーリス)
ラフマニノフ:交響曲第2番 ホ短調op.27

アフタヌーン・コンサート~桂冠指揮者尾高忠明 BBC NOW30周年、70歳記念~
12/11(月)14時開演 BBCホディノット・ホール
“エルガー・プログラム”
序曲「コケイン」op.40(ロンドンの下町で)
海の絵op.37
弦楽のためのセレナード ホ短調op.20
南国にて(アラッショ)op.50



 

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