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2017/11/09 | KAJIMOTO音楽日記

●来日直前!本拠地アムステルダム・コンセルトヘボウでコンセルトヘボウ管を聴いて


ブロムシュテット&ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管が絶賛来日ツアー中ですが、それに続き、来週には新しい首席指揮者ダニエレ・ガッティとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンビが日本初お目見え。
つい先日の11/2に、音楽ジャーナリストの森岡葉さんが現地アムステルダムで彼らの演奏会(日本と同じプログラム)を聴かれて、そのレポを書き&ソリストのフランク・ペーター・ツィンマーマン(Vn)のインタビューをしてくださいましたので、以下、ぜひお読みください!

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 ファン待望の2年ぶりの日本ツアーを前に、昨年秋に首席指揮者に就任したダニエレ・ガッティ率いるロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏を本拠地コンセルトヘボウで聴いた。プログラムは、ドイツ正統派のヴァイオリン奏者、フランク・ペーター・ツィンマーマンをソリストに迎えてベートーヴェン《ヴァイオリン協奏曲》、そしてブラームス《交響曲第1番》。11月18日から始まる日本ツアーの(プログラムAにあたる)をいち早く聴くことができた。



親密なアンサンブルで、生き生きと展開されたベートーヴェン《ヴァイオリン協奏曲》




 11月2日、3日、同じプログラムのチケットは早々に完売。筆者が聴いたのは初日だが、夜8時15分の開演前から満席の客席には熱い期待がみなぎっていた。舞台後方の階段からガッティとツィンマーマンが笑顔でステージに登場すると、会場は大きな拍手に包まれた。
 ティンパニが微かに刻む4つの音で始まる牧歌的で美しいオーケストラの序奏が始まると、ツィンマーマンは第1ヴァイオリンのパートをオーケストラと共に奏で、アインガング風のフレーズで始まるヴァイオリン・ソロが、まるでオーケストラの中から湧き上がるかのように感じられた。自由で伸びやかなガッティの指揮に導かれて主題がドラマティックに展開し、ヴァイオリン・ソロとオーケストラの対話が鮮やかに描き出されていく。カデンツァは、クライスラーが書き残したもの。ツィンマーマンは、クライスラーが所有していた1711年製の名器、ストラディヴァリウスを豊かに歌わせて第1楽章を締めくくる。

穏やかで安らぎに満ちた第2楽章では、オーケストラの温かな美音が、繊細な情感あふれるヴァイオリン・ソロに絶妙に溶け合う。第3楽章は、明快なリズムに乗って、ヴァイオリン・ソロとオーケストラの掛け合いが繰り広げられ、華やかなクライマックスを飾った。会場は総立ちのスタンディング・オベーション。指揮者とソリストは何度もステージ後方の階段を登っては熱狂的な拍手に呼び戻され、ツィンマーマンがソロ・アンコールとしてバッハ《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番》の第4楽章アレグロを演奏して前半のステージの幕を閉じた。





マエストロ・ガッティの精密な解釈、熱く歌うフレーズが色彩豊かなブラームスの世界を構築

 後半はブラームス《交響曲第1番》。オペラ指揮者としての印象が強いダニエレ・ガッティだが、ドイツ・オーストリア音楽の指揮にも定評がある。楽曲に真摯に向き合い、スコアを丁寧に読み込むことで知られるこのマエストロは、譜面台を置かず、暗譜でこの大曲を振り、ブラームスの緻密なオーケストレーションを、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の色彩豊かな音色を操って解き明かしていく。全身をしなやかに使った情熱的な指揮から、重厚なサウンドの中にイタリア人らしいカンタービレが生まれ、透明感のある弦、艶やかな木管、金管が織りなす鮮やかなブラームスの世界を楽しませてくれた。各所の名旋律を奏でる首席奏者たちの演奏の秀逸さは言うまでもないが、第2楽章の後半、コンサートマスターのリヴィウ・プルナールのヴァイオリンとホルンの掛け合いの美しさに、思わず息を呑んだ。最終楽章のハ長調の主題は、まさに圧巻。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の最大の魅力である芳醇な響きを存分に堪能させてくれた。鳴り止まぬ拍手の嵐、スタンディング・オベーションにもかかわらず、アンコールはなかったが、満ち足りた聴衆はいつまでも拍手を惜しまず、新しい首席指揮者ダニエレ・ガッティへの厚い信頼と深い愛情を感じさせた。



★インタビュー・・・フランク・ペーター・ツィンマーマンに聴く



——来日ツアーに向けて、日本の聴衆にメッセージをお願いします。

 私にとっては3年ぶりの来日となります。素晴らしい音響のホール、温かい聴衆、日本での演奏はいつもエキサイティングで楽しいです。今回はマエストロ・ガッティ、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団との共演で、ベートーヴェンの偉大なコンチェルトを聴いていただきます。待ちきれないほど楽しみです!

——ベートーヴェン《ヴァイオリン協奏曲》は、あなたにとってどのような作品なのでしょうか?

 この作品は、私にとって永遠にエベレストのように高くそびえ立つ存在です。もう何百回も演奏しましたが、弾くたびに新鮮な感動を覚えます。

——カデンツァはクライスラーのものでしたね。

 はい。クライスラーが所有していた1711年製のストラディヴァリウスに一番合うと思うのです。

——オーケストラが演奏する箇所で、いつも第1ヴァイオリンと一緒に演奏していましたね。トゥッティでコンサートマスターの方を向いて楽しげに演奏している姿が印象的でした。

 ベートーヴェン、モーツァルト、J.S.バッハのコンチェルトでは、いつもそのようなスタイルをとっています。その方が居心地がよく、時代様式に合っていると感じられるからです。

——ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団について語っていただけますか?

 私がもっとも親しみを感じているオーケストラです。私が師事したヘルマン・クレバース先生は、20年近くにわたってこのオーケストラのコンサートマスターを務めました。先生は90歳を越えていますが、今でもとてもお元気なんですよ。このオーケストラとは、80年代の終わりから30年以上さまざまなコンサートで共演してきました。ヴァイオリン奏者の多くがクレバース先生の門下なので、私はファミリーの一員のように感じています。


文・聞き手・写真: 森岡 葉(音楽ジャーナリスト)




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