ネトレプコの来日が迫ってきました。9/8にプログラム全曲を発表させていただきましたが、「彼女のソロのアリアをもっと聴きたかったな」「この重唱は何?」など、お客様の色々な声を聞きましたので、いくつか“聴きどころ”をご紹介しますね。
例えばプッチーニの「トゥーランドット」の三重唱があることで、初めてネトレプコのトゥーランドットが聴けたりするわけです。楽しみ方は色々。
【ソプラノ・ソロ】
これは何といってもネトレプコも歌いたてのホヤホヤ(?)、先月8月にザルツブルク音楽祭で初めて演じた「アイーダ」のアリア、「勝ちて帰れ」ではないでしょうか?(サルツブルクでは、リッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィルと共演)
壮大な外観とは対照的に、実はとても内面的なドラマである「アイーダ」。恋人か、父か、で引き裂かれる心を激しく、また静かに歌い上げるのは、元からドラマティコであったわけではないネトレプコにはうってつけかも。
(私は、昔、アイーダ役が十八番だったマリア・キアーラの強く清澄な声を思い出しています)
それからリリック、コロラトゥーラからドラマティックに踏み出した大きな一歩として「マクベス」夫人の歌は、昨シーズンの彼女のハイライトの一つで(特にMET公演)、かつ昨年の来日コンサートでは歌っていなかったので、ぜひご期待を。
またロシア出身の彼女が歌うリムスキー=コルサコフの「皇帝の花嫁」のアリアや、近しいスラヴ系のドヴォルザーク「ルサルカ」の美しいアリア「月に寄せる歌」は、嫌が上にも楽しみです。
【二重唱】
ヴェルディ「仮面舞踏会」の第2幕あたま、総督リッカルドへの秘めた愛を消そうとしている人妻アメーリア。当のリッカルドが迫ってきていきなり愛を告白するので、葛藤しながらもやはり本当の心が抑えきれなくなるという、スリリングでドラマティックな二重唱。こういう部分は良くも悪くも一本気な歌を歌うエイヴァゾフと、「女優歌手」とも異名をとり、心理の動きを完全に声、歌、演技で役になりきるネトレプコにとっては見せ場中の見せ場。
それと対照的に、レハールの「メリー・ウィドウ」の、あの超有名な、優雅で陶酔的なワルツがネトレプコ夫妻によって歌われる、というのはちょっとこのコンサート以外では体験できないのでは?
【三重唱】
先述しましたが、ネトレプコによるプッチーニ「トゥーランドット」が聴けるとは!
いくらドラマティックへと歩を進めたとはいえ、まだこのオペラ全曲をネトレプコ主演で聴ける日は当分来ないと思うので、これは貴重。彼女の謎かけを一つ一つ開いていくカラフと、それにより追い込まれるトゥーランドットのひりひりしたスリリングなやりとりが楽しみ。
そしてプログラム・ラストのヴェルディ「トロヴァトーレ」の第1幕終わり。レオノーラ、ルーナ伯爵、マンリーコの三角関係の三重唱。ネトレプコが歌うレオノーラをめぐって、2人の男が火花を散らします。熱くドラマティックなだけではなく、レオノーラにはそれを裏打ちさせるような、上から下へと跳躍したり、疾駆する音の、声のすさまじいテクニックが要求されます。実際の舞台上演で、ネトレプコはそれを完全にクリアし、2人にはさまれる苦悩を胸に迫る音楽とした、と高く評価されました。
私もDVDで観ましたが、それは往年の歴史的大家たちと肩を並べるような歌手となったな、と実感されるものでした・・・。
それぞれのオペラの、それぞれの「人間」場面。どうぞお楽しみに!!
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2017.09.19
2017.08.01