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2017/09/14 | KAJIMOTO音楽日記

●シャイー&ルツェルン祝祭管弦楽団 来日を前にVol.3―― メンバーに聞く(4)レイモンド・カーフス(Timp)




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レイモンド・カーフス Raymond Curfs

言わずと知れたバイエルン放送交響楽団の首席ティンパニスト。LFOは創立時からのメンバーである。


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――まず、ルツェルン祝祭管(LFO)の魅力とは何でしょう。

「個々のメンバーの、このオーケストラに対する熱意だと思います。一堂に会し、一丸となってベストを尽くして演奏する。最良の結果を得るためにはこの熱意がとても重要です。私たちはコンサートで最高の演奏をしたいだけです。誰も時計など気にしたりしません。管楽器のソロからトゥッティ、弦楽器の美しいサウンドのどれもから互いにインスピレーションや刺激を交換し合いながら、演奏に反映させてゆく。つまりLFOの魅力は、音楽への愛から生まれるポジティヴなエネルギーの集積なのです」


――しかし、メンバーたちは様々なところから集まっています。それも皆そこかしこの中心的存在です。どのように音楽のヴェクトルを一致させるのでしょう。

「クラウディオ(・アバド)は室内楽のように演奏する方法を教えてくれました。彼が教えてくれたその方法は、我々の体内の遺伝子に刻まれています。そしてこの遺伝子はまだ我々の中にしっかりと残っているので、どのようなビッグ・オーケストラからメンバーが参加してきても問題ありません。同じ根を持った樹木に新しい葉が加わっただけのようにうまくいくのです。そして今はリッカルド(・シャイー)と一緒に、さらに新しい方法を探そうとしています」


――LFOの特徴は何ですか?

「このオーケストラの特徴は、感情的表現の爆発が巨大なだけでなく、一方できわめて心の通い合った演奏にあります。これは常に感情や情熱に基づいたものです。よい意味での緊張もLFOには流れており、その緊張感は尽きることのない長い弓のようなもので、一瞬も途切れることはありません。また、集中力を失うこともない。またそれを義務としてではなく、自ら望んでやっているのです。その結果がよいコンサートとなっているわけです。私はこれがこのオーケストラの特徴だと思います」


――アバドを失った後、LFOはどのように変わったのですか?

「まだ多くのメンバーがクラウディオの死を悲しんでいることもあり、あまり変わっていないと感じています。オーケストラは独自のキャラクターを持っています。このキャラクターと演奏のスタイルを守っていくことが私たちの義務なのです」


――あなたは創立メンバーですものね。

「ええ、私たちの遺産を将来に継続していこうと思っています。もちろん新しい要素はやってきます。同じところに留まり続けられないのが芸術です。私たちは発展しなければなりません。しかし同時に、LFOにおける基本的な考え方は、未来に伝えようとしています。ですので、私はオーケストラが大きくは変わっていないと思います」


――あなたはまだアバドと彼の理想、彼の音の存在をLFOの中に感じていますか?

「ええ、確かにまだ多くの瞬間に感じますね。クラウディオとLFOによる13年間の演奏の中には、オーケストラが“クラウディオ・サウンド”を生み出す瞬間や 演奏中に感極まり強烈に胸を打つ瞬間が数多くありました。私はティンパニストなので、実際に叩いている時も、休みの時も彼の顔をよく見ていました。彼と対面していると音楽に感情が加わります。今でも彼のことを思うといつでも心が動かされます。そう、彼はなんとなく、この辺にいるんですよ」


――シャイーの音楽の魅力的な点は何だと思いますか?

「彼はとても情熱的で、その情熱は、まず第一に音楽に向けられています。そして、オープンな方なので、とても建設的なよい議論をすることができます。これは共に成長する上で望ましいことです。また、作品の背景や作品そのものについての知識が豊富ですね。原典版から第2版、第3版、その他の細かな修正に至るまで研究もよくしています。背景部分など、ほとんど科学的とも言えるほどよく調べていますね。口数の少ないクラウディオとはかなり違います。クラウディオはこちらの道にいて、リッカルドはあちらの道にいるような感じです。しかし、違った道を辿りますが、素晴らしいコンサートという目指すゴールは同じなんです」


――あなたにとってLFOとは何ですか?

「このオーケストラは私の人生の一部です。最初はクラウディオです。彼は本当にエキサイティングでした。そして今は、彼のオーケストラへの責任を感じています。LFOの持つ特別な個性を継承していくこと、それが私にとって重要なことです。LFOは仲間と共にインスピレイションや、新しく新鮮なアイディアを分かち合う源です。そこで得たものは日々の仕事にも役立ちますしね。LFOがハイ・レヴェルであり続けるよう努力するのも大事なことです」


聞き手・文・写真: 松本 學(音楽評論家)


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