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イーヴォ・ガス Ivo Gass
ガスは地元ルツェルン出身のホルン奏者。出身学校もルツェルン音大で、以前ルツェルン祝祭管(LFO)の首席だったブルーノ・シュナイダーに師事した。LFOに初めて参加した時はミュンヘン・フィルの首席(2003年~)だったが、09年にMPhに惜しまれつつチューリヒ・トーンハレ管弦楽団に首席として移籍した。LFOでは当初シュナイダーのもと、第3奏者を中心に担当していたが、現在はシュナイダーの後任として首席を務めている。
アレグリーニと肩を並べるスーパー・ホルニストである。
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――まず、LFOの魅力を聞かせてください。
「このオーケストラはメルティング・ポット(るつぼ)のようだと思います。メンバーの国籍は多様で、室内楽の専門家やソリストもいます。あらゆるタイプの奏者がいて、その個性と様々なアイディアが混在しているのは、オーケストラにとって最もよいことのひとつだと考えます」
――同様の質問ですが、あなたにとってLFOのよい点は何ですか?
「このオーケストラの首席ホルンとして参加するのはとても特別なことです。ルツェルンは私の故郷ですし、ここで育ち、ここでホルンを始めました。故郷とLFOは、どちらも私にとって、とても密接に結びついた素敵な場所なんです」
――LFOの特徴は何ですか?
「LFOのキャラクターはこれまでの年月でとても深みを増したと思います。クラウディオ(・アバド)とともにスタートし、年々オーケストラが音を成長させてきたのを感じています。今、10年前とはまったく違うオーケストラだと思います。メンバーもたくさん変わりましたし」
――あなたの所属しているトーンハレ管と比較して、LFOについての別の特徴は何ですか? もちろんメンバーは違いますが。
「ハハハ、オーケストラを比較するのは難しいですね。通常のオーケストラは、ずっと幅広い年齢層のミックスってことかな」
――アバドを失った後、LFOはどのように変化しましたか?
「どの程度変わったかというのを言葉にするのは難しいですね。でも、ツアーを含めたネルソンスとのコンサートでも確かにまったく異なっていました。また、昨年はハイティンクでしたが、この時もオーケストラはまったく違ったと思います。 ハイティンクもネルソンスもシャイーも、皆オーケストラに自分のパーソナリティを投影させますから」
――あなたはまだアバドの存在やスピリット、彼の音楽や理想がこのオーケストラに残っていると感じますか?
「今年は過去にクラウディオとやったことのない曲ばかりを演奏しているため、それほどではありません。しかし、ここには彼に特別に招かれた人がまだたくさんおり、オーケストラに音楽の贈り物をしようというクラウディオのアイデアは確かに継承されていて、今でもその影響を聴くことができます」
――シャイーとアバドの違いは何ですか?
「ハハハ、ランボルギーニとフェラーリを比較するみたいですね、難しすぎるな。まったく違っているのに、同時に2人ともきわめて比類なくカリスマティックです。うまく言い表せませんね」
――シャイーはLFOに新しい何かをもたらすのでしょう。
「R.シュトラウスかな(笑)。私はアマチュア時代からシュトラウスを演奏したことがなかったので、このオーケストラでシュトラウスを初めて吹くことができる時を心待ちにしていました。LFOはマーラーとブルックナーなどはほとんどやっていますが、これからはレパートリーを拡大することを求めています」
――LFOとはあなたにとって何ですか?
「私にとってLFOは、1年に2週間だけルツェルンに置かれるフィックスポイント(固定点)的な存在で、なんていうか、大きな家族みたいなものです。音楽家は皆お互いを知っていて、さらに他のオーケストラがルツェルンに来ても、LFOの誰かがそこの同僚やその家族を知っています」
――来たる10月には、LFOは11年振りの来日となります。
「楽しみです。それと、私は本当に楽しんで演奏をした時に、オーケストラがどのように成長できるかを探求しています。日本では3か所の異なったホールで演奏するので、創造的で新しい方法を見つけることができます。私たちは滅多にKKL以外で演奏しませんからね。このツアーを楽しみにしています」
聞き手・文・写真: 松本 學(音楽評論家)
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2017.08.22
2017.08.19