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2017/09/07 | KAJIMOTO音楽日記

●アンナ・ネトレプコ、来日公演までまもなく!―― 初役となった「アイーダ」@ザルツブルク音楽祭


「アンナ・ネトレプコ スペシャル・コンサート2017 in JAPAN」の日が段々近づいてきています。ネトレプコ&エイヴァゾフ夫妻も準備万端で日本公演に備えているようです。

さて、ネトレプコといえば、つい先月話題になったのが、ザルツブルク音楽祭におけるヴェルディ「アイーダ」の主役初挑戦でした(共演はリッカルド・ムーティ指揮ウィーン・フィル。アリア「勝ちて帰れ」は日本公演でも歌われることが決まっています)。
新聞、雑誌、インターネットともに絶賛評が見られましたが、音楽評論家の石戸谷結子さんが公演プログラム用にレポートをお書き下さいましたので、こちらにも掲載させていただきます。



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 今年のザルツブルク夏の音楽祭、最大の話題はアンナ・ネトレプコが初めてタイトル・ロールを歌う、ヴェルディの《アイーダ》だった。指揮は巨匠リッカルド・ムーティ、オーケストラはウィーン・フィルとあって、売り出し直後から激しいチケット争奪戦が繰り広げられた。チケットは早々にソールド・アウトで、ネットではプレミアム・チケットが数千ユーロで取引されたと噂になった。

 その《アイーダ》を8月19日に観ることができた。会場の祝祭大劇場は、この日ひときわ華やかな雰囲気に包まれた。レア・チケットを手に入れることができたのは、フレンズ&パトロンのメンバーが多かったようで、ゴージャスな空気が漂っていた。席に着くと緞帳までゴールド、と思ったら金色の壁は舞台装置の一部だった。演出はニューヨークで活躍するイラン出身の女流映像アーティストのシリン・ネシャット。白と黒のシンプルな舞台装置に映像を投影させるという演出だ。

 幕が開き、ラダメス役のフランチェスコ・メーリが「清きアイーダ」をリリックに端正に歌いあげる。そしてアイーダ登場。グレーの優雅な衣装に身をつつんだネトレプコは、第一声から豊かで緊迫感に満ちた声。「勝ちて帰れ!」は、幕の前に出て一人で詠唱し、聴衆の心をわしづかみにするほどの、強烈な存在感を示した。デビューの頃はコロラトゥーラの役も歌った彼女だが、年々声が充実し、いまではドラマチックな役にも挑戦している。しかし決して声を張ることなく、充実した低音部を巧みに使い、やわらかで深い表現力を身につけた。充分な声量と、パワフルで輝かしい高音も健在。まさにいま円熟の絶頂期を迎えているネトレプコだ。

 第3幕の「おお、私の故郷」では、ソットヴォーチェを駆使して高音を美しく響かせる。そしてクライマックスの土牢の場では、哀しくも甘い愛をしみじみと歌いあげた。舞台は全体に暗く、動きがほとんどない。虐げられた民族の哀しみと抑圧された女性の悲哀が演出のテーマだと思うが、メッセージ性は強く感じられず、その分ネトレプコの確固とした存在感ある歌唱と、ウィーン・フィルの豊饒なサウンドが浮かび上がる。ムーティの指揮も、ゆったり目のテンポでヴェルディの音楽をじっくり聴かせた。

 オペラ界のディーヴァであり、女王の貫録がすっかり身に着いたアンナ・ネトレプコ。秋のシーズンは、ウィーン国立歌劇場で《アドリアーナ・ルクヴルール》を歌い、12月7日のスカラ座シーズン・オープニングには、夫君のユシフ・エイヴァゾフとともに、シャイーの指揮で《アンドレア・シェニエ》を歌う。来年はメトロポリタン歌劇場で初役の《トスカ》が控えている。来日記念盤として、彼女のために新しく作曲された愛の歌(ポピュラー曲)をエイヴァゾフとデュエットした『ロマンツァ』も発売されて、公私ともに幸せに満ちた“アンナ・グレイト!”だ。


石戸谷 結子(音楽評論家)


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*9/5には来日記念盤として、ユニバーサル ミュージックからネトレプコ夫妻のデュエット・アルバム「ロマンツァ」が発売されます!
http://www.universal-music.co.jp/anna-netrebko/products/479-8110/


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