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2017/06/26 | KAJIMOTO音楽日記

●まもなく来日。7/4(火)にすみだトリフォニーホールでリサイタルを開く、ピアノ界の至宝ネルソン・フレイレに聞く!




そのピアニズムたるや世界遺産、とファンから尊敬、演奏家たちからは羨望される世界ピアノ界の至宝、ネルソン・フレイレの来日が近づいています。

今月上旬、パリでピアニストの酒井茜さんに、この巨匠へインタビューをしていただきました。貴重な言葉の数々、ぜひお読みいただいてから7/4のすみだトリフォニーホールのリサイタルへ!

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――今回のリサイタル・プログラムの曲目はどのように選ばれましたか?

プログラミングはパズルになぞらえられる愉しい作業です。経験、勘、そして判断力が求められますから。「良い」プログラムには、ひとびとを納得させるある種のロジックやタイミングが備わっていますし、聴く側と演奏する側、双方の興味を刺激してくれます。聴衆と奏者、どちらかだけを楽しませるプログラムは好ましくありません。今回のリサイタルでは、バッハの幾つかの編曲の後にシューマンの《幻想曲》を演奏します。この組み合わせが、後半の構成に呼応しています――後半では、私の母国ブラジルが誇る作曲家ヴィラ=ロボス(《ブラジル風バッハ第4番》の<前奏曲>)が、深く尊敬するバッハにオマージュを捧げるという形をとっています。これに続くのが、同じくヴィラ=ロボス作曲の《赤ちゃんの一族 第1組曲》に収められた愛すべき数曲です。前半と後半の「メインディッシュ」として、シューマンと、ショパンのロ短調の方のソナタの2つのロマン派の傑作を配しました。


――とりわけフレイレさんの音の美しさには惚れ惚れしてしまいます。何か秘密はあるのでしょうか。

サウンドの探求は私にとって重要な課題です。幸運なことに、ブラジルで最初に師事したニセ・オビノ先生とルシア・ブランコ先生にとって、サウンドは最優先すべき要素のひとつでした。彼らは何よりもまず演奏テクニックというものを、しかるべきテンポを維持しながらサウンドを表現するための手段とみなしていました。オビノとブランコはまた、それぞれの作曲家の様式を捉えることの大切さを教えてくれました。私は、昨今の演奏において様式の問題が軽視されているように感じることがあります。作曲家の世界に没入することよりも、自分自身の個性を示すことに心血を注いでいる演奏者がいるという意味において。


――今回の来日では、リサイタルのほかに読売日本交響楽団とブラームスのピアノ協奏曲第2番を共演されます。この曲はシャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管との素晴らしい録音がありますね。

ブラームスは私にとって、付き合いの長い、かけがえのない友人のような存在です。ブラームスの音楽を深く愛するようになったのは、23歳の時に、オビノ先生が《ラプソディ第1番》をコンサートで演奏するのを聴いた時です。その後、ブラームスのすべての作品を知りたいと思うようになりました。さて、ピアノ協奏曲第2番を初めてレッスンで弾いたのは14歳の時です。ウィーンでブルーノ・ザイドルホーファー先生に師事した際に最初にみていただいたのもこの曲でした。以来、協奏曲第2番は私の演奏家としての人生に絶えず寄り添ってくれています。そう、私は自分のレパートリーを擬人化する癖があるのです!ところで、ブラームスのピアノ協奏曲第2番には、私がピアノを始めたばかりの頃の思い出が詰まっています。自分の人生でもっとも幸せだった数年と言えるでしょう。新しい出会いや新しい経験に満ちた時代でしたし、当時は今のように演奏家としての責務をひしひしと感じたこともありませんでしたから……(笑)


――日本へは3年ぶりの来日になりますね。

日本が大好きです!日本の方々と接すると、アーティストに対する深いリスペクトを感じるからです。日本で最初に私のお世話をしてくれたマネージャーのこともよく覚えています。信義の厚い、そして先見の明のある素敵な方でした。私が初めて来日したのは1971年ですから、ずいぶん昔のことになります……!このたび日本で演奏できることを心から嬉しく思っています。美味しい日本食も楽しみです!


――音楽以外の楽しみについてもお聞かせください。

映画です。とくに1940・50年代の作品が好きです。“愛の女神”と呼ばれ一世を風靡した女優リタ・ヘイワースの大ファンで、彼女が出演した『ギルダ』の台詞はほとんど暗記しています!その美しさは言うまでもありませんが、彼女は音楽の才能にも恵まれていましたし、ダンスも第一級の腕前でした。抗しがたい魅力を放つ女優です。同時代の「フィルム・ノワール」も大好きです。
 

聞き手: 酒井茜(ピアニスト)
2017年6月 パリにて



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