5月12日に当HPで発表いたしました、今年10月に行う、伝説の歌姫キャスリーン・バトル来日公演の詳細が、以下のように決まりました!
キャスリーン・バトル プレミアム・ナイト
Kathleen Battle Premium Night
2017年10月16日(月)19:00 ザ・シンフォニーホール
Monday, October 16, 2017 at 7 p.m. The Symphony Hall,OSAKA
2017年10月19日(木)19:00 サントリーホール
Thursday, October 19, 2017 at 7 p.m. Suntory Hall,TOKYO
ソプラノ: キャスリーン・バトル
Kathleen Battle, soprano
ピアノ: ジョエル・マーティン
Joel Martin, piano
プログラム:未定
【価格】
[10/16] S¥18,000 A¥15,000 B¥12,000 C¥9,000
[10/19] S¥22,000 A¥17,000 B¥12,000 C¥9,000
カジモト・イープラス会員限定先行受付
6月22日(木)12:00 ~ 25日(日)18:00 ●チケットのお申し込み
一般発売
7月2日(日)10:00~ ●チケットのお申し込み
プログラムが未定なこと、大変申し訳ありません。
これは本人にもぜひ熟考してもらい、発表を楽しみにしていただければ、と思います。
(決まり次第、当HP等で発表致します。なお現在のところ、彼女を一躍有名にしたヘンデル「オン・ブラ・マイ・フ」やモーツァルト、ラフマニノフ、S.ジョプリンの作品などを歌う予定です。)
1987年のカラヤンが指揮するウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートでのJ.シュトラウス「春の声」や、ザルツブルク音楽祭での同じくカラヤン指揮のモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」でのツェルリーナ、ムーティ指揮の「コシ・ファン・トゥッテ」でのデスピーナ、またMETにおけるレヴァイン指揮のR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」のツェルビネッタなど、大空に声が舞う数々の名唱を昨日のことのように思い出します。
14年ぶりの来日となるバトル、下に再び、昨年秋にこれまた22年ぶりとなるメトロポリタン歌劇場での復帰コンサート評を掲載いたしますが、その折に聴きに行かれた関係者数人が異口同音に、「キャスリーン・バトルの後にバトルなし。彼女の歌は健在だった」と語っておりましたので、ぜひ楽しみにしたいところです。
昔からのファンの方も、初めて聴かれる方も、声楽ファンにとっては必聴の公演になると思いますので、ぜひ多くの方々に足をお運びいただければ。
ご期待ください!
キャスリーン・バトルが22年ぶりにMETに復帰─「待つだけの価値あり」
Anthony Tommasini(「New York Times」2016年11月14日)
(前略)去る日曜、バトルは現在の総支配人ピーター・ゲルブに招かれてMETに復帰した。(中略)68歳のバトルの歌唱は、並外れた溌剌さと美しさを湛えていた。思い起こせば、オペラ歌手として全盛を誇った頃のバトルの声質は、ゾフィー役(R.シュトラウス《ばらの騎士》)やスザンナ役(モーツァルト《フィガロの結婚》)にうってつけの軽やかなリリック・ソプラノである。しかし同時に、バトルの歌い方は極めて明瞭で華やかであったから、その演奏は、ふくよかながらも良く通る響きと、燦然たる存在感を兼ね備えていた。去る日曜のバトルの歌唱は、そうした絶頂期の特長を押しなべて留めていた。時折、息苦しそうなパッセージや、かすかな疲労の気配が目についたが、バトルの声は総じて見事に響いていたし、何より、美しい高音は健在だった。(中略)筆者が特に感銘を受けたのは、彼女がピアノとのデュオで披露した黒人霊歌で、なかでも《天国という都》では、「約束の地」への憧れ、悲哀、そして子どもを彷彿させる天真爛漫さが、感動的に織り交ぜられていた。バトルは今もなお、骨の髄までプリマドンナである。(後略)
■チケットのお申し込みはこちら
カジモト・イープラス会員限定先行受付
6月22日(木)12:00 ~ 25日(日)18:00 ●チケットのお申し込み
一般発売
7月2日(日)10:00~ ●チケットのお申し込み
キャスリーン・バトル(ソプラノ)
Kathleen Battle, Soprano
ソプラノ歌手キャスリーン・バトルの声は、「無条件で、世界でもっとも美しい稀有な声のひとつに数えられる」(『ワシントン・ポスト』)。しかし、持ち前の輝かしい声質もさることながら、無数の賛辞や褒賞や偉業に満ちたキャリアを築いてきたバトルを何よりも特徴づけているのは、自身と音楽と聴衆のあいだに揺るぎない感情の絆を生み出す魔法のような能力だろう。
オハイオ州ポーツマスに7人兄弟の末子として生まれたバトルは、幼い頃には教会と学校で歌いながら、音楽教師になることを夢見た。やがて彼女は─全世界の聴衆にとって幸運なことに─、音楽への愛を人々と分かち合うためのもうひとつの道、つまり演奏家としての道を歩むことになる。天賦の才、生まれながらの知性、たゆまぬ努力によって、バトルはその飛翔する歌声に導かれてクラシック音楽界の頂点に上り詰めた。実際、屈指のオペラ・ハウスや主要なコンサート・ホールの舞台でバトルが響かせる透明で紛う方ない声を、批評家たちは飽くことなく絶賛している。彼らは、「冬の月明かりの得も言われぬ美」(『ワシントン・ポスト』)、「想像を絶する天と地の出会い」(『フィラデルフィア・インクワイアラー』)、「奇跡的な、底なしの瓶に注がれたミルクの最良の上澄み」(『ニューヨーク・タイムズ』)と言ったじつに詩的な言葉を用いて、バトルの声質を描写してきたのである。
バトルの幅広いレパートリーは、バロック時代から現代まで3世紀にまたがる。とりわけオペラの分野においては、ヘンデル(メトロポリタン歌劇場では初上演となった《エジプトのジュリアス・シーザー》でのクレオパトラ役)からR.シュトラウス(ゾフィー役、ズデンカ役、ツェルビネッタ役)まで、多岐にわたる作曲家の作品に出演し大きな成功を収めた。《ナクソス島のアリアドネ》のツェルビネッタ役でコヴェント・ガーデンにデビューした際には、ローレンス・オリヴィエ賞(オペラ新制作ベスト・パフォーマンス部門)をアメリカ人として初めて受賞した。さらに、モーツァルトの傑作(スザンナ役、デスピーナ役、パミーナ役、ツェルリーナ役)はもとより、ロッシーニ(《セビリアの理髪師》)とドニゼッティ(《愛の妙薬》《ドン・パスクヮーレ》《連隊の娘》)のベルカント・オペラにおいても、同世代中、もっとも優れた歌い手として定評を得た。批評家ティム・ペイジによれば、「バトルの十八番は、少女の無垢な喜びが表現される甘く静穏な音楽である。このレパートリーで彼女を凌ぐ者はいない」。
これまで5つのグラミー賞を獲得しているバトルは、リサイタルの分野においても、独創的な芸術性と美しい歌唱によって世界各地の聴衆を魅了してきた。『ニューヨーク・ニュースデイ』は彼女のカーネギー・ホールへのリサイタル・デビューについて、「歌曲リサイタルという公演形体がもはや時代遅れとなった今日に、バトルはこれを見事に復活させ、私たちの心を躍らせた」と報じている。ドイツ・グラモフォンからリリースされた同公演の録音は、グラミー賞(ベスト・クラシカル・ヴォーカル・ソロイスト部門)に輝いた。『オーストラリアン』は、世界中の評論家たちの意見を代弁していると言えるだろう。「これまで幾人もの偉大な歌い手たちがシドニー・オペラハウスの舞台に立っている。とはいえ、アメリカからやって来たソプラノ歌手キャスリーン・バトルのリサイタルに比肩する公演が過去にあった(あるいはこの先ある)とは思えない」。
バトルはクラシック音楽の枠を超えて、歌手としての才能を開花させてきた。とりわけ黒人霊歌の偉大なる歌い手としての活動は、ジェシー・ノーマンとの共演による『スピリチュアルズ・イン・コンサート』(ドイツ・グラモフォン)に反映されている。喜びと悲しみが入り混じる黒人霊歌にバトルが込めるピュアな力は、あらゆる文化の垣根を縦横無尽に飛び超え、感動をもたらしている。事実、『ヴィエナ・クリアー』によれば、「あまりに美しく《天国は美しきところ》を歌い上げたキャスリーン・バトルは、天国のすぐそばまで接近していた」。
バトルは、アカデミー賞・グラミー賞受賞者アンドレ・プレヴィンと、ノーベル賞・ピューリッツァー賞受賞者トニ・モリスンが手掛けた《ハニー&ルー》の世界初演者として大きな注目を集めた。この歌曲集はカーネギー・ホールの100周年を機にバトル自身が委嘱したものである。以来、彼女はこの作品を、一流オーケストラとともに世界各地のリサイタルで歌っている。『ロサンゼルス・タイムズ』はその演奏を「魅惑的」と称え、『シンシナティ・ヘラルド』は「バトルの声はまるで潮の干満のようで、神々しいまでの沈黙が会場を包んだ」と評した。バトルによる《ハニー&ルー》の録音(ドイツ・グラモフォン)には、バーバーの《ノックスヴィル:1915年夏》とガーシュウィンの《ポーギーとベス》のアリアも収録されている。
つねに自らの芸術的な地平の拡大を追求してきたバトルは、子守歌、黒人霊歌、民謡を集めた自身初のクロスオーバー・アルバム『ソー・メニー・スターズ』(ソニー・クラシカル)では屈指のジャズメンたちと共演している。バトルのジャズ・アーティストとしての類まれな才能について、『デトロイト・ニュース』は「ジャズ・トリオを従えたバトルの音楽は、耳の許容範囲を今にも超えそうなほどの輝きを放っていた」と書いた。
バトルは在学中から現在まで、最高峰の音楽家たちと共演してきた。彼女は世界屈指のオーケストラから引く手あまたのソリストであり、ヘルベルト・フォン・カラヤン、サー・ゲオルク・ショルティ、リッカルド・ムーティ、ジェームズ・レヴァイン、クラウディオ・アバド、ロリン・マゼール、小澤征爾、レナード・スラットキン、サー・ネヴィル・マリナーを筆頭に、第一級の指揮者たちから全幅の信頼を寄せられてきた。さらに、ソプラノ歌手ジェシー・ノーマン、テノール歌手ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ヴァイオリン奏者イツァーク・パールマン、トランペット奏者ウィントン・マルサリス、ギター奏者クリストファー・パークニング、フルート奏者ジャン=ピエール・ランパル、ヒューバート・ロウズ、サクソフォン奏者グローヴァー・ワシントン・ジュニアらとのパートナーシップは、多数の録音や映像に記録されている。
レコーディング・アーティストとしても高く評価されているバトルは、これまであらゆる主要レーベルから、オペラ、コンサート、合唱、ソロなど、多岐にわたる録音や映像を発表している。バトルのライヴ録音(ドイツ・グラモフォン)・映像(ソニー)として特筆に値する『モーツァルト:戴冠ミサ』(ヴァチカン公演)と『ニューイヤー・コンサート1987』(共演:ウィーン・フィル)では、いずれもカラヤンの指揮で独唱を務めている。マリリン・ホーン、サミュエル・レイミー、ジョン・ネルソンとの共演でタイトル・ロールを歌った『ヘンデル:歌劇《セメレ》』は、バトルに5つ目のグラミー賞をもたらした。同録音は、バトルを筆頭にほぼ同じキャストで行われた、カーネギー・ホール100周年の折の伝説的な演奏会を懐古するものである。
バトルは、アメリカ合衆国大統領や政府高官たちに向けた特別演奏会や、オペラ・コンサートのテレビ放送、さらに人気トーク番組への出演を通じて、さまざまな新しい聴衆を開拓し、クラシック音楽の魅力を広く伝える「大使」として計り知れない貢献をしている。PBSで放送されたメトロポリタン歌劇場の1991年シーズンのオープニング・ガラに出演したバトルは、クラシック音楽を扱ったテレビ番組において傑出した活動を行った個人として、エミー賞を授けられている。また、ウィントン・マルサリス、ジョン・ネルソン、聖ルカ管弦楽団と共演した『バロック・デュオ』(ソニー)のレコーディング風景を収めたドキュメンタリー映像も、エミー賞にノミネートされた。VHS・DVDとしてドイツ・グラモフォンからリリースされた「メトロポリタン歌劇場プレゼンツ」シリーズの『モーツァルト:魔笛』『ドニゼッティ:愛の妙薬』『ロッシーニ:セビリアの理髪師』でのバトルの歌唱や演技も、批評家たちのあいだで絶賛されている。他方、ソニーから発売されているザルツブルク音楽祭でのライヴ映像『モーツァルト:ドン・ジョヴァンニ』(指揮:カラヤン)では、ツェルリーナ役を演じるバトルの姿を追うことができる。
その音楽性の特徴ともいえる鋭敏な知性に恵まれたバトルは、シンシナティ大学カレッジ音楽院で学士号と修士号を取得した。これまで、母校シンシナティ大学のほか、ウェストミンスター・クワイヤー・カレッジ(ニュージャージー州プリンストン)、オハイオ大学、ザビエル大学(シンシナティ)、アマースト・カレッジ、シートン・ホール大学、ウィルバーフォース大学(オハイオ州)、マンハッタンヴィル・カレッジ、シャウニー州立大学から、名誉博士号を贈られている。さらにバトルは、その傑出した芸術活動を称えられ、NAACP(全米黒人地位向上協会)イメージ・アワードの殿堂入りを果たしたほか、2002年にはハリウッド・ボウルより殿堂入りが発表されている。彼女は、ウィルバーフォース大学が贈るレイ・チャールズ・アワードの初代受賞者でもある。そうした目のくらむような数々の業績の起点には、かつて「誰かが聴きたいと望む歌声をもつことの喜び」を一心に感じながら音楽と向き合っていた、ひとりのあどけない芸術家の姿がある。
文:アレックス・ワン
2017.05.12