クリスマスも終わり、まもなく新年がやってきます。
新年が明ければウィーン・リング・アンサンブルのニューイヤー・コンサート。
愉楽に酔う、大人の時間が待ち遠しいです。
リング・アンサンブルも、昨年、今年とここへきて大きくメンバーが入れ替わりました。
今度のツアー会場で販売される公演プログラムに、
音楽評論家・奥田佳道さんが、このメンバーのことについてエッセイを寄稿して下さいましたので、その一部分を下記に掲載致します。
新しいメンバーその他、ぜひ思いをはせつつ、年明けのリング・アンサンブルを楽しみに・・・ひいては元旦のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートの生中継を見ていただけたら、と思っております。
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メンバー交代に一抹の寂しさを覚えないこともない。しかし諸先輩が培ってきたウィーンの流儀は、現代的な視座や感覚を採り入れつつ、中堅へ、若手へと受け継がれる。ウィーンやグラーツ、ザルツブルクの学び舎で、またオペラにオーケストラ、室内楽のステージという実践の場を通じ、師や先輩から「ウィーン気質」が伝授される。楽都はそれこそモーツァルトの時代から、愛すべき世代交代を続けてきたのだ。
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音楽史に想いを寄せてみたい。シュミードル家は代々クラリネットを吹いている。ペーターの祖父アロイス・シュミードルも、父ヴィクトル(1942年没)も、続けてというわけではなく間隔は結構空くのだけれど、ウィーン国立歌劇場とウィーン・フィルの首席奏者だった。父のウィーン・フィル在籍は1920年から1934年のことだから、
ペーター・シュミードルが生まれる前のことである。
ちなみに祖父アロイスはグスタフ・マーラー(1860~1911)のもとで演奏した歴史的なプレイヤーにして、晩年のブラームスの「カード仲間」だったそう(シュミードルが母親から聞いた話による)。世紀転換期の楽都を駆け抜けた鬼才マーラーも名門シュミードル家もボヘミア系だった。
でペーター・シュミードルの先生は、ルドルフ・イェッテル(1903~1981)とアルフレート・ボスコフスキー(1913~1990)。レオポルド・ウラッハ(1902~1956)とともに、古き佳き時代のウィーン・フィルの響きを創った偉人たちである。アルフレート・ボスコフスキーの兄は、1955年から79年までヴァイオリンを手にニューイヤーコンサートを指揮した、あのヴィリ・ボスコフスキー(1909~1991)。言わずと知れた元コンサートマスターだ。
今どきのアーティストに話題を移せば、オーケストラでは第1ヴァイオリンのリーダー職を担い、キュッヒル・クァルテットでも弾くようになった中堅
ダニエル・フロシャウアーの妙技が聴き手を喜ばせている。
ウィンナ・ワルツに命を吹き込む第2ヴァイオリンの例の「後打ち」のリズム。
あのリズムとハーモニーをウィーン・フィルの良心とも至宝ともいうべきソロ・ヴィオラの
ハインリヒ・コルと奏でる様は、誤解を恐れずに申せば、それだけでもう絵になる。フロシャウアーと練達のコルによる、これぞウィーンという内声もこのアンサンブルの宝。コルもキュッヒル・クァルテットのメンバーである。
フロシャウアーとくれば、1953年から1991年にかけてウィーン少年合唱団、楽友協会合唱団、国立歌劇場、ブレゲンツ音楽祭で合唱指揮者を歴任し、その後ケルンWDRを本拠に指揮活動を展開したヘルムート・フロシャウアー(1933~)の名を挙げないわけにはいかない。ヘルベルト・フォン・カラヤンの信頼も厚かったChordirektor(コアディレクトゥア)。ダニエルのお父さんである。
華やかな音色(ねいろ)と茶目っ気のあるパフォーマンスで私たちを魅了したウォルフガング・シュルツがいないのは、分かってはいても、やはりちょっと悲しい。2013年3月28日、ウィーンで67歳という若さで天に召されたシュルツ。
そんなシュルツのポジションを受け継ぐのは、もちろん簡単なことではない。しかしこれはという人が現れた。インスブルック出身でフランス語圏の流儀も体得した若き名手
カール=ハインツ・シュッツだ。1990年代の終わりころから国際コンクールで頭角を現し、2011年までウィーン交響楽団に在籍。昨年もファビオ・ルイジの指揮でモーツァルトのコンチェルトを奏でた俊英が今年もやってくる。近未来は彼に託された。
そんな大型「新人」を包み込む天才肌のホルン奏者
ヴォルフガング・トムベックは、またしても、のお話になるのだけれど、父も同名のホルン奏者だった。最晩年のベームをはじめカラヤン、バーンスタイン、クライバーと渡り合ってきたトムベックがステージにいるのは、私たちにとって幸せなことだ。
(このエッセイ全文は、演奏会場で販売される公演プログラムに掲載しておりますので、ぜひ購入してお読みいただければ幸いです)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■チケットのお申込みはこちらまで今年もあとわずか。
たくさんの演奏会がありました。時には輝かしく高揚し、時には静謐に沈潜する舞台の数々。
皆様にとって、印象深い、人生の1ページとしてなにかが加わった演奏会がもしあれば、私どもスタッフにとってもこんなに嬉しいことはありません。
まずは来年2014年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます(年内、まだまだニュースを配信してまいりますので、引き続きお付き合いください)。