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2013/12/05 | KAJIMOTO音楽日記

●NYフィルな小話 (1) ~こんな曲も世界初演!「新世界」アメリカの音楽史を体現するオケ

 1842年に創設され、2012年に満170歳の誕生日を迎えたアメリカ最古のオーケストラ、ニューヨーク・フィルハーモニック(以下、NYフィル)。1743年に設立された世界最古のシンフォニー・オーケストラ=ゲヴァントハウス管よりも少し若くで、1842年生まれのウィーン・フィルとは同じ年の、長~い歴史を持つ楽団です。
 アメリカ音楽史の歩みを体現するといっても過言ではないこの楽団が(そのことについては後に詳しく述べます)2月におこなう5年ぶりの日本ツアーに先駆け、当ブログでは、NYフィルのあんな話やこんな話を、お届けしていこうと思います。



 折しも先日、フランスのナントでは20回目の開催となる「ラ・フォル・ジュルネ2014」のテーマが発表されました。題して、「峡谷から星たちへ」。メシアンの作品のタイトルを用いたこのテーマのもと、1860年から現在までのアメリカ音楽史にスポットライトを当てるそうです。この「峡谷から星たちへ」が世界初演された地もニューヨーク。この地のヒストリーを紐解くだけでも、充実したアメリカ音楽史を振り返ることができるでしょう。

 

<NYフィルを振った“超”豪華な指揮者たち>


 話をNYフィルに戻します。まず、かつて音楽監督としてNYフィルを育てた巨匠を振り返っておきます。グスタフ・マーラー、アルトゥーロ・トスカニーニ、レオポルト・ストコフスキー、レナード・バーンスタインら、20世紀を代表する音楽家たち・・・(豪華!)。
 そしてクレンペラーやフルトヴェングラーといった大指揮者や、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、R.シュトラウス、ストラヴィンスキーといった作曲家たちも、NYフィルを指揮したことがあります。


マーラー (http://nyphil.org/history/より)


バーンスタインとグレン・グールド
 

<こんな曲も世界初演:作曲家たちの「新世界」アメリカ!>


 NYフィルは、多くの作曲家たちから信頼を寄せられ、世界初演を任されてきた楽団です。リストの「交響詩“タッソ、悲哀と勝利”」、ドヴォルザークの「交響曲第9番“新世界より”」、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第2番」、シェーンベルクの「ナポレオンへの頌歌」、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」(2014年の日本ツアーでも演奏!詳細はこちら)などを、いずれも“作曲者の存命中に”世界初演しています。
 ロシア/ソ連出身のラフマニノフやユダヤ人のシェーンベルクら多くの音楽家が、祖国の政治的混乱によりアメリカに渡り、「アメリカン・ドリーム」を現実のものにしました。
 

<作品委嘱:「人種のるつぼ」アメリカの心意気>
 

 NYフィルは、作曲家に新作を依頼するという活動を通して、アメリカの作曲史(ひいては世界の音楽史)を牽引してきました。
(アラン・ギルバートが音楽監督に就任後は、コンポーザー・イン・レジデンスという制度を導入して、この活動をさらに進展させています。その話はまたいずれ。)
 これまで160作品以上を委嘱。ガーシュウィンの「へ調の協奏曲」やヒンデミットの「オルガンとオーケストラのための協奏曲」などのほか、日本の作曲家では武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」(NYフィル創設125周年記念、指揮は小澤征爾)と
「ファミリー・トゥリー」(NYフィル創設150周年記念、指揮はスラットキン)がこれに含まれます。
 委嘱リストを眺めていて驚くのは、作曲家たちの人種・ジャンルの多様さ。アメリカのケージ、カーター、W.マルサリスの他、イギリスのホルスト、イタリアのベリオ、フランスのメシアン、中国のタン・ドゥン、インドのラヴィ・シャンカルらがNYフィルの後押しで新作を生みました。「人種のるつぼ」「機会平等の国」アメリカの懐の深さが垣間見られます。

 過去の全委嘱作品のリストは、楽団のHPでご覧いただけますので、ご興味のあるかたはお時間のある時にぜひどうぞ(こちら)。


2009年、音楽監督に就任早々の来日ツアー中に会見を行ったアラン・ギルバート
 

<アメリカ初演:NYフィルとチャイコフスキーの意外な関係>
 

 NYフィルは、アメリカがヨーロッパからクラシック音楽を“輸入”する仲介の役割をも果たしました。
 その作品数はおびただしく全てはご紹介できませんが・・・、たとえばベートーヴェンの2・3・4・7・8・9番の交響曲やメンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」、シューベルトの「交響曲“ザ・グレート”」、ラヴェルの「ボレロ」、ブルックナーの「交響曲第9番」、
ショスタコーヴィチの「ヴァイオリン協奏曲第1番」(2014年の日本ツアーでも演奏!詳細はこちら)などをアメリカ初演したのがNYフィルです。
 ちなみに・・・2014年の日本ツアーで、NYフィルはチャイコフスキーの第5番の交響曲を披露予定ですが(詳細はこちら:東京横浜&名古屋&大阪 )、楽団はチャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」や第2・3・4・6(“悲愴”)番の交響曲、「マンフレッド交響曲」、「弦楽のためのセレナード」、「コロネーション・マーチ」(←チャイコフスキー自身の指揮で!)などなど、多くの作品をアメリカ初演しています。
 

***

小話と前置きしておきながら、随分長くなってしまいましたが・・・
次回の“小話”では、音楽監督アラン・ギルバートと歩むNYフィルの今、そしてアジア出身の演奏家たちの活躍に触れたいと思います。

(つづく)




ニューヨーク・フィルハーモニック 2014年 2月 来日ツアー

指揮: アラン・ギルバート
ピアノ: 小曽根真(2/10、2/15) イエフィム・ブロンフマン(2/12)
ヴァイオリン: リサ・バティアシュヴィリ(2/13)

■2014年 2月 9日(日) 14:00/名古屋 愛知県芸術劇場コンサートホール 【プログラムA】
【問】中京テレビ事業 052-957-3333

■2014年 2月10日(月) 19:00/大阪 ザ・シンフォニーホール 【プログラムB】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 2月12日(水) 19:00/東京 サントリーホール 【プログラムC】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 2月13日(木) 19:00/東京 サントリーホール 【プログラムD】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2014年 2月15日(土) 15:00/神奈川 横浜みなとみらいホール 【プログラムE】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960


【プログラムA】
ラウス: 狂喜
バーンスタイン: 『ウエストサイド物語』より「シンフォニック・ダンス」
      * * *
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムB】
ブリテン: 青少年のための管弦楽入門
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー (ピアノ:小曽根真)
      * * *
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムC】
ラウス: 狂喜
リンドベルイ: ピアノ協奏曲第2番(ピアノ:イエフィム・ブロンフマン)
     *  * *
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64

【プログラムD】
ベートーヴェン: オペラ「フィデリオ」序曲 op.72b
ショスタコーヴィチ: ヴァイオリン協奏曲 (ヴァイオリン:リサ・バティアシュヴィリ)
     * * *
ベートーヴェン: 交響曲第1番 ハ長調 op.21
ガーシュウィン: パリのアメリカ人

【プログラムE】
ラウス:狂喜
ガーシュウィン: ラプソディ・イン・ブルー (ピアノ:小曽根真)
     * * *
チャイコフスキー: 交響曲第5番 ホ短調 op.64


<関連公演>
Sony Music Foundation(公益財団法人ソニー音楽財団)
10代のためのプレミアム・コンサート・シリーズ
アラン・ギルバート&ニューヨーク・フィルハーモニック
2014年2月11日(火・祝)18:00開演
<会場>サントリーホール
指揮:アラン・ギルバート/ジョシュア・ワイラースタイン
管弦楽:ニューヨーク・フィルハーモニック
ピアノ:小曽根 真
<曲目> ブリテン:青少年のための管弦楽入門
       ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
バーンスタイン:『ウエストサイド物語』より「シンフォニック・ダンス」 ほか
<お問い合わせ> Sony Music Foundation TEL 03-5227-5233
 

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