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2013/07/26 | エル・システマ

【エル・システマ通信】指揮者バスケス、大使館でのプレス懇談会「エル・システマの今」に登場!

去る7/18(木)・7/21(日)に東京フィルハーモニー交響楽団を客演指揮したクリスティアン・バスケス(ベネズエラ出身)が、プレス懇談会「エル・システマの今 ~指揮者クリスティアン・バスケスを迎えて~」(駐日ベネズエラ・ボリバル共和国大使館主催)にメイン・スピーカーとして参加しました!



懇談会が行われたのは、7月19日(金)午後。
都内の駐日ベネズエラ・ボリバル共和国大使館にはプレス関係者が集まり、「エル・システマ」の創設者ホセ・アントニオ・アブレウ博士の“直弟子”で、「エル・システマ」卒業後は指揮者として世界を舞台に活躍するバスケスが、「エル・システマ」の近況や真髄についてたっぷりと話をしてくれました。


(向かって左から)モリース・レイナ氏(駐日ベネズエラ大使館文化担当官)、石川成幸氏(駐日ベネズエラ大使)、クリスティアン・バスケス


冒頭、石川成幸大使は、「人道的・社会的見地から音楽を教えるというアヴレウ先生の素晴らしい理念」に支えられた「エル・システマ」により、ベネズエラが近年、クラシック界で注目を集めていることに触れられました。
また日本とベネズエラが外交樹立75周年を迎える今年、「エル・システマ・フェスティバル」(東京・広島)が開催されることへの喜びや、相馬市の「音楽による生きる力をはぐくむ事業」との協働によって被災地の復興支援に取り組む「エル・システマ ジャパン」への感謝の想いを伝えました。

先に登場したメイン・ゲストのクリスティアン・バスケスは、今月末に29歳になるという、ベネズエラ出身の若手指揮者。「エル・システマ」を通じて音楽と出会った彼は、現在は「テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ」の指揮者として「エル・システマ」の後輩たちを指導する立場にもあります。

冒頭のスピーチでは、「日本を代表するオーケストラのひとつ、東京フィルハーモニー交響楽団より招かれ、指揮者として日本デビューを飾ることができて嬉しい」とにこやかに語ってくれました。

彼がヴァイオリンに出会ったのは8歳。10代でユース・オーケストラに入団し経験したツアーの想い出や、15歳の時に教会で初めてオーケストラを指揮した時のエピソードも披露されました。(「自分は小柄だけれど、指揮台に立った時に随分と大人物になった気分で爽快だった!」そうで、懇談会場には笑いが。)



マエストロの転機は、2006年。アヴレウ博士の直々のアドバイスで指揮を本格的に学ぶことを志し、以後、博士から様々なことを学んだそうです。08年に指揮者としてカラカス・デビューしたのち、世界中から客演のラブコールが寄せられ、現在にいたります。

印象的だったのは、2008年のエピソード。実はバスケスは、シモン・ボリバル響(旧:シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・カラカス)の“ヴァイオリン奏者”として来日しているのです。これは気付いていませんでしたね。
とりわけ、2008年にアヴレウ博士の強い希望により実現した同団の広島公演は、今も同時の全メンバーにとって大事な思い出となっているそうです。(「平和の象徴としての広島を、博士はメンバーに見せたかったのだと思う」とマエストロ。)


このほか、会場からは様々な質問――
「エル・システマの理念は理解しているが、では技術的な面でどのような特徴を持つ音楽教育システムなのか?バスケス氏やドゥダメルなど、これほど優れた音楽家を輩出している理由を教えてほしい」
「新大統領就任によって今後のエル・システマに変化が起こる可能性はあるのか」
「日本で公的機関がある教育システムに予算を割く場合には、どうしても“統計”がもとめられる。エル・システマは青少年による犯罪の軽減に役立っているとよく言われるが、近年、具体的にはどのような成果が出ているのか。そもそもこうした“科学的調査”についてベネズエラ国やエル・システマはどのように考えているのか」
「今秋のエル・システマ・フェスティバルの“聴きどころ”は?」
・・・などなどが、寄せられました。

ちなみに現在、「エル・システマ」内には450のオーケストラ/アンサンブルの団体が所属し、50万人がこの画期的な音楽教育システムを通して音楽と出会っているそうです。
(目標は100万人だそうです!)

「地図にも書かれていないような僻地にも飛行機とボートを駆使して音楽を教えに行くんだよ」「刑務所で行ったワークショップは印象的だった」とバスケスが語りましたが、いやはや、「エル・システマ」は本当に様々な活動を行っているのですね。

「エル・システマ」の理念はずばり「平和のためのコンサート」であり、「楽器を持って団結し、よりよい世界を目指す」ことだと、バスケスは確信を持って語ります。
エル・システマの意義は、子供や若者の力をどこまでも信じ、音楽によって社会を変えようという強い信念のもと実践してきたところにあるのですね。

国によって社会問題は様々ですが、調和と団結の精神というのはどんな問題解決の際も大切な気がします。エル・システマがいまや世界52カ国に広がり、ベネズエラとは社会背景の異なる地域でもその理念が受け入れられ、現地の人々によって実践されているのはこのためなのかもしれません。

懇親会の最後には、一般社団法人エル・システマジャパンの代表理事菊川穣氏が、昨年春から福島県相馬市でスタートしたエル・システマの理念に基づく教育支援の現状と今後の展望を語りました。


相馬市での活動について語るエル・システマジャパン代表理事の菊川氏

菊川氏は、「エル・システマ」とは、スペイン語で“ザ・システム”という意味であり、音楽メソードのひとつではなく、「しくみ」づくりであるということに地域の理解を得ながら活動を進めてきたそうです。
また、家庭の事情にかかわりなく、どんな環境のこどもたちも芸術を通して自己を表現し、誇りと自信をもって生き生きとすること、そして親に変化が起こり、その周りの人々も変わって社会が変革されていくこと、こうしたエル・システマの教育理念の実現こそが被災地の厳しい環境に身をおく子供たちに夢と希望を与えることができるのではないかと考え、この活動をスタートしたとのこと。

石川大使も、社会において一番みじめな状態というのは、「社会において誰でもない」ということであり、エル・システマの活動に参加する子供たちは、オーケストラの団員として尊重され、「誰かになっている」ことを感じるのですと語っておられました。
子どもたちの前向きな姿勢は、その家族、そして社会全体を変化させていく力があるのかもしれません。
日本でも本格的にスタートしたエル・システマ。今後の活動に目が離せません!

世界的な音楽家を輩出する音楽教育機関としてのエル・システマではなく、音楽の社会的意義を信じて実践するエル・システマの真髄を感じられた懇親会となりました!


全世界が注目する音楽による人材育成システム 「エル・システマ」

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