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2012/11/28 | KAJIMOTO音楽日記

●ソヒエフ&トゥールーズ管のストラヴィンスキー祭り!!(4)~バレエ上演レビューから~

ソヒエフ&トゥールーズ・キャピトル国立管がフランスで行った「ストラヴィンスキー・プロジェクト」を追う本連載も、最終回。
これまで、彼らがストラヴィンスキーの「プルチネルラ」「詩編交響曲」「結婚」を演奏会形式で取り上げた映像や(こちら)、その公演レビュー(こちら)をご紹介してきましたが、本日は、プロジェクトのメインとしてその直後に行われた“バレエ上演”の話題を取り上げたいと思います。

そもそもトゥールーズ管は、“劇場付オケ”としての顔も持つ多才な集団(このことについては追ってご紹介するインタビュー動画で、ソヒエフ自身も力説しています)。
彼らの驚くべき音色の豊かさ・多彩さ、レパートリーの広さ、各音楽作品へのアプローチの柔軟さ、そして何より表現力の高さは、オペラやバレエの上演、つまり歌手やダンサー、演出家やその他ジャンルのアーティストたちとのコラボレーションを繰り返す中で培われてきたものと言えるでしょう。

・・・ということで、10月にトゥールーズ・キャピトル劇場バレエ団との協力で行われた「プルチネルラ」「詩編交響曲」「結婚」のバレエ版上演のレビューと写真を、ご紹介してみます。
ソヒエフ&トゥールーズ管がいかに多様かつクリエイティヴなアプローチで、ストラヴィンスキーの音楽世界を体得しているのか・・・その一端に触れていただけましたら幸いです!



~ レビュー ~


(略)先週、演奏会形式で披露されたストラヴィンスキーのバレエ作品が聴衆をどれほど感動させたかということについては方々で語られることになるだろう。今回おこなわれた総合芸術としてのバレエの上演も、それに匹敵する出来であった。トゥールーズ管はピットに入り少し窮屈そうではあっても、その素晴らしい演奏の質を依然保っていた。(略)ソヒエフの指揮は確固とし、さらなる力強さを帯びて、ダンサーたちを見事に支えていた。(略)

3作のうちで最も、演奏会形式版からバレエ版への過程で変化が見られたのは「プルチネルラ」である。その多様なニュアンスはそのままに、いっそう引き締まったリズムの支えを得ていたといえる。今回採用された制作はロッテルダムのスカピノ・バレエのもので、初演は1987年に遡る――私たちをイタリアの伝統演劇コメディア・デッラルテへの快い旅へといざなう、古典的なエレガンスが特徴だ。(略)




「詩編交響曲」では、1978年にキリヤンがネーデルランド・ダンス・シアターのために振り付けたものが採用されていた。シンプルな舞台装置――舞台奥のペルシャ絨毯と幾つかの椅子、そして何よりJoop Stokvisの洗練された照明が印象的だ――から、時間を越えた何かが立ちのぼってくる。(略)

そして「結婚」では、結婚という制度が容赦なく冷笑の的となる――ダンサーたちに滑稽さを付与するどぎつい化粧は、結婚を信じることがいかにむなしいことであるかを描き出しているように思えた。(略)2002年初演のグラン・バレ・カナディアン(モントリオール)の制作は、このテーマへ明快な態度を表明していく。全てがこれでもかと速いスピードで展開され、祝祭的ですらない興奮に満ちた喧噪がひたすら続く。(略)




ソヒエフにこの上演を任せたキャピトル劇場バレエ部門監督のKader Belarbi、そして同劇場ディレクターのFrédéric Chambertは、北オセチア出身の指揮者 [=ソヒエフ] の内にあるストラヴィンスキーへの情熱に信頼を寄せていた。稀代の音楽が、世界屈指の劇場で採用されている振付で上演されたわけであるが、このために手を結び成功を収めた者たちを、観客は拍手喝采で称えた。


原文



トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 2012年12月 来日ツアー
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
諏訪内 晶子(ヴァイオリン)

■2012年12月8日(土・祝) 19:30 横浜/横浜みなとみらいホール 【プログラムB】
【問】横浜みなとみらいホール 045-682-2000

■2012年12月10日(月) 19:00 東京/サントリーホール 【プログラムA】
【問】カジモト・イープラス 0570-06-9960

■2012年12月11日(火) 18:45 名古屋/愛知県芸術劇場コンサートホール 【プログラムC】
【問】中京テレビ事業 052-957-3333

■2012年12月13日(木) 19:00 新潟/りゅーとぴあ コンサートホール 【プログラムA】
【問】りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521

■2012年12月14日(金) 19:00 京都/京都コンサートホール 【プログラムD】
【問】京都コンサートホール 075-711-3090


【プログラムA】
ベルリオーズ: 序曲「ローマの謝肉祭」 op.9
サン=サーンス: ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 op.61 (ヴァイオリン:諏訪内 晶子)
   ***
ベルリオーズ: 幻想交響曲 op.14

【プログラムB】
バラキレフ(リャプノフ編曲): 東洋的幻想曲「イスラメイ」
ストラヴィンスキー: バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)
   ***
リムスキー=コルサコフ: 交響組曲「シェエラザード」 op.35

【プログラムC】
ベルリオーズ: 序曲「ローマの謝肉祭」 op.9
ラヴェル: ボレロ
   ***
ベルリオーズ: 幻想交響曲 op.14

【プログラムD】
ベルリオーズ: 序曲「ローマの謝肉祭」 op.9
サン=サーンス: ヴァイオリン協奏曲第3番 ロ短調 op.61 (ヴァイオリン:諏訪内 晶子)
   ***
ストラヴィンスキー: バレエ「火の鳥」組曲(1919年版)
ラヴェル: ボレロ


トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団 プロフィール

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