<レビュー1>
~Proms:キャメロン・カーペンターとライプツィヒ・ゲヴァントハウス管~
土曜に行われた「プロムス」の2公演は、いずれもわれわれの考え方を覆そうとするものだった。まず昼間に、キャメロン・カーペンターが登場。魅惑的な超絶技巧により、”オルガン・リサイタル”の在り方そのものを再定義してみせた。スパンコールが散りばめられたパンツとカット・オフTシャツに身を包んだ、まるでロック・スターのような出で立ちのカーペンターは、曲間にはBBCのアナウンサーを相手に、バイロン風の言い回しでオルガンに対する想いを語った――自身にとってオルガンとは決して「愛」ではなく、「熱情あるいは執念」[の対象] であるのだと。
専門的な話をするなら、彼の音楽表現は極端である――J.S.バッハに基づくプログラムの冒頭では、原曲がヘ長調の《トッカータとフーガ》が、扱いにくい嬰ヘ長調へと移調され、演奏困難なペダル(足鍵盤)によるソロが茶化される。偉大なニ短調の《トッカータとフーガ》もカーペンター自身による編曲であったが、ブゾーニによる同曲のピアノ用編曲版と、サー・ヘンリー・ウッドによる管弦楽版からの引用がみられた。
オルガン・ストップのコントロールによって幅広い音色のスペクトルを生み出していくその演奏は、実に素晴らしい。心奪われずにはいられない。
(以下略/シャイー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の公演について)
Tim Ashley (「ガーディアン」紙 2012年9月2日) [原文]
<レビュー2>
~ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管とキャメロン・カーペンター~
(前略)ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管の公演前の昼間には、キャメロン・カーペンターのオルガン・リサイタルが開かれた。名目上は“オール・バッハ・プログラム”であっても、注目の的はカーペンター“その人”である。巨大なアルバート・ホールでバッハを聴くのは、モダン・オーケストラによるブランデンブルク協奏曲の演奏と同じ位に、ひたすら不釣り合いである。
けばけばしいパフォーマンスの見せ場は、ト短調の《幻想曲とフーガ》、そして無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュードが、カーペンターによるワーリッツァー [注1] 風の足鍵盤のみのファンタジーに切り替わる箇所、あるいは有名なニ短調の無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌが、壮大な“プレリュードとフーガの混合”の中でマーラーの第5交響曲と組み合わされる時であった。しかし結果はいずれも、ただただグロテスクである。
[注1:60年代後半から70年代にかけて広く使われたエレクトロニック・ピアノ]
Andrew Clements (「ガーディアン」紙 2012年9月3日) [原文]
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2012.09.14