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2012/08/03 | KAJIMOTO音楽日記

●国際オケの“新たな名門”…リュウ・シャオチャ指揮 フィルハーモニア台湾を徹底解剖! (3) 台北公演に潜入!

いよいよ8/5(日) 10:00~一般発売がスタートするフィルハーモニア台湾(以後、PT)の東京公演(with萩原麻未)。
前回の連載(第2回)では、音楽監督のリュウにスポットライトを当て、彼の華麗なるキャリア、手腕、そして彼とともに急速な成長を遂げたフィルハーモニア台湾の最近の活動をご紹介しました。

本日は、去る6月にリュウ指揮PTが台北で行った定期公演(曲目は、難曲トゥランガリラ交響曲!)に潜入したKAJIMOTOスタッフのレポートをお届けします。


***


6月16日のシャオチャ指揮PTの定期公演を突撃取材!ということで、初めて台湾を訪ねました。
台風の接近により大雨と猛暑に見舞われた首都・台北。
そんな天候には慣れっこのPTメンバーも、ナイアガラの滝のごとく大地を攻撃する雨を止めることはできず…。豪雨で初日の大事なリハーサルが泣く泣くキャンセルされた(!)翌日に、彼らを訪ねることになりました。

1986年に創設されたPTですが、2005年に台北のカルチャーの中心である「国立中正文化中心」(国立文化センター)との提携を開始。
以後PTは、台湾の美術と音楽のメッカ・国立文化センター内のコンサートホール“国家音楽廰”にて、定期公演を行っています。
なんと、全てのリハーサルを本番と同じ“国家音楽廰”でみっちり行うという、恵まれた環境の中で公演準備が行われているそうです。






写真1:国立中正文化中心の様子




写真2:国家音楽廰


余談ですが、国立中正文化中心の中には、大量の音楽書籍とCDを所蔵する音楽図書館、そして本屋もあります。週末ということで、雨にも関わらず文化に関心の高い人々がひっきりなしに訪れていました。
日本から輸入された音楽雑誌などもあり、親近感が深まります・・・






写真3・4:音楽図書館内の様子


さて。
6/16の公演は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」序曲とメシアンの「トゥランガリラ」という、ずばり直球で“愛”をテーマにしたプログラム。

まずは前日のリハーサルに潜入しましたが、流石はオペラを十八番とするリュウ・シャオチャ(指揮)。ワーグナーの前半部分から何度も何度もオーケストラをとめ、弦楽器群の各声部の歌い方を入念に指示します。
PTの特徴のひとつは、重厚でリリカルな弦楽器群の個性。
まるで全員がコンサートマスターでありオペラ歌手であるかのように、ひとりひとりの弦楽奏者が積極的に音楽作りに参加するさまが印象的です。

メシアンの「トゥランガリラ」には、世界的な“メシアン弾き”であるロジェ・ムラロ(ピアノ)とヴァレリー・ハルトマン(ヴァレリー・アルトマン=クラヴェリーとも。オンド・マルトノ)を招くという徹底したこだわりぶり。
メシアン夫人イヴォンヌ・ロリオに師事し、メシアン自身に「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」を絶賛されたこともあるムラロと、同じくロリオの弟子でメシアンの「アッシジの聖フランチェスコ」を初演しているハルトマン。
この上ないメシアンのエキスパートといえるこの黄金コンビを迎えようとするリハーサル会場には、若干の緊張が走りました…。




写真5:「トゥランガリラ」のリハ、間もなく!


と、リハーサルの話がかなり長引きましたので、翌日の本番の様子に話題を変えます。

ようやく雨の止んだ夜の国家音楽廰には、開場と同時に大量のお客様が入場。
お目当ては、音楽学者の先生がロビーで行うプレ・トーク「メシアン:トゥランガリラ交響曲の聴きどころ」です。
各所で音源を聴かせながら、「トゥランガリラ」のテーマである愛が意味するところ、そしてメシアンと宗教や哲学について語る先生。立って熱心に聴くお客様もいて、すでに会場は熱気に包まれます。
20世紀の音楽をもっともっと台湾に定着させたい、そして地元の聴衆にもっと楽曲について知ってほしい、というリュウとPTのこだわりが、ここにもあるのですね。




写真6:夜の国家音楽廰も美しいのです



写真7:プレ・トークで勉強するお客様



写真8:国家音楽廰は内部も芸術的です


前半の、オペラの情景が目に浮かぶような見事な音楽描写だったワーグナーにつづき、大曲「トゥランガリラ」がホールに響き渡ります。
「トゥランガリラ」といえば、金管楽器の活躍と極限まで複雑化されたリズムが頭に浮かびますが、流石はリュウ率いるPT。直前のG.P.(最終リハーサル)ではリュウの指示により大事をとって意図的に音量を減らしていた金管群(むしろ金管軍!)が、ここぞとばかり鳴ります、鳴ります!
前述のとおり、弦楽器群は外声も内声も楽曲全体における役割を巧みに察知して、絶妙に歌います。ボリュームもゆたか。

個々の奏者というミクロのレヴェルでとにかくスケール感が大きいPTの演奏を、マクロのレヴェルではリュウが冷静に統制。
メシアンが書いた複雑なリズムの裏にひそむ数学的な均整美が、端正に浮き彫りになっていきます。




写真9:「トゥランガリラ」本番


恍惚の「トゥランガリラ3」に続く「終曲」は、圧巻。台北のお客様はとても積極的で、ブラヴォーやスタンディング・オベーションが止みません。




写真10:カーテンコール


メシアンの難曲を演奏し終え、大満足のリュウでしたが、
終演後には
「個々の奏者の技術的レヴェルと音楽表現における積極性は誇れるが、全体のまとまりなど、まだまだ課題はある。日本公演までに必ずもっとパワーアップします」と発言。
東京公演をすでに意識しながら、7月の台北での「蝶々夫人」上演に臨むと張り切っていました。

東京公演は、抒情的でスケールの大きな曲を得意とするリュウ&PTの自信十分のプログラム。秋にむけてさらに向上しているPTの演奏に、ご期待ください。


*フィルハーモニア台湾 来日公演*

日時 2012年11月9日 (金) 19:00 開演 (18:30 開場)
会場 東京オペラシティ コンサートホール
出演
    オーケストラ: フィルハーモニア台湾
    指揮: リュウ・シャオチャ
    ピアノ: 萩原 麻未

料金
    S¥7,000 A¥5,000 B¥3,000

プログラム
    チャイコフスキー: 幻想序曲「ロミオとジュリエット」
    グリーグ: ピアノ協奏曲 イ短調 op.16
    ドヴォルザーク: 交響曲第9番 ホ短調 op.95 「新世界より」


【カジモトイープラス会員限定先行受付】
終了

【一般発売】  ●お申し込み
8/5(日) 10:00 ~


フィルハーモニア台湾 プロフィール
萩原 麻未 プロフィール
 

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