今秋、萩原麻未をソリストに迎えて東京公演をおこなうリュウ・シャオチャ&フィルハーモニア台湾。
国際オケの“新たな名門”といえるこの楽団を様々な角度から解剖し、皆さまに期待を高めていただくことが狙いの本連載ですが、第一弾の本日は、そもそも…ということでフィルハーモニア台湾の魅力について力説していきたいと思います!
◆フィルハーモニア台湾とは?◆
「フィルハーモニア台湾Philharmonia Taiwan」は、1986年に台北で創設されたオーケストラ。台湾内では「国家交響楽団 National Symphony Orchestra Taiwan(略称=NSO)」という名称で知られていますが、海外での活動においては「フィルハーモニア台湾」という呼称を用い、ウィーン、パリ、ベルリン、シンガポール、クアラルンプール等でその名演を披露しています。
これまで、マゼールやペンデレツキ、バルシャイ、スラットキン、ホグウッド、ポッペンらが指揮台に立っており、
2001~07年に同団の音楽監督を任されたチェン・ウェンピン(簡文彬)は、98年から04年まで札幌のPMF(パシフィック・ミュージック・フェスティバル)でレジデント・コンダクターを務め評判を呼んでいた名指揮者です。彼の音楽監督時代にベートーヴェン・ツィクルスやワーグナーの《ニーベルングの指環》全曲上演(台湾初演)が行われたほか、マーラー、ショスタコーヴィチ、R.シュトラウス等のレパートリーの拡大が積極的に進められました。
♪LISTEN♪ ⇒ こちらでチェン・ウェンピン指揮フィルハーモニア台湾の音源を試聴できます
◆天才指揮者リュウ・シャオチャが音楽監督に◆
2010年8月、指揮者リュウ・シャオチャ(呂紹嘉)が音楽監督に就任(彼の手腕については次回の連載に書きます!)。楽団のさらなる技術の向上とレパートリーの拡大を目指すリュウは、初シーズンにシェーンベルクなどの新ウィーン学派の作品を積極的に振り、今2011/12年シーズンにはメシアンとストラヴィンスキーの作品に重きを置いたプログラミングをしています。
そのハイライトとなった今年6月には、メシアン演奏のエキスパートとして世界的に有名なロジェ・ムラロ(ピアノ)とヴァレリー・ハルトマン(オンド・マルトノ)を招き、大作「トゥランガリラ交響曲」の演奏を成功させました(この公演についても、別途詳細をレポートいたします!)。
こうした活動とクォリティが示す通り、「アジアのオーケストラは世界的に見てローカル」という偏見はもはや過去のもの。彼らはすでに国際的にトップ・レヴェルといえる洗練された質を保持しているのです。
♪LISTEN♪ ⇒ こちらでリュウ・シャオチャ指揮フィルハーモニア台湾の音源を試聴できます (ショスタコーヴィチの4番/と英雄の生涯)
◆オペラへの積極的な関わり◆
フィルハーモニア台湾の近年の急成長のキーワードは、「挑戦」でしょう。
まず挙げられるのは、近年、フィルハーモニア台湾がとりわけ力を注いでいるオペラ上演です。
07年より、世界的オペラ・ハウスとの共同制作を開始したフィルハーモニア台湾は、07年以降、ドイツ・オペラ・アム・ラインと《ばらの騎士》、コヴェント・ガーデン王立歌劇場(ロイヤル・オペラ・ハウス)やオペラ・オーストラリア(シドニー・オペラ)と《カルメン》、オペラ・オーストラリアと《蝶々夫人》を制作・上演。
このほか前述のワーグナー:《指環》(全曲/台湾初演)や《エレクトラ》、《ノルマ》(台湾初演)、《ファルスタッフ》(台湾初演)などの上演を成功させています。
◆現代音楽の普及◆
フィルハーモニア台湾は、08年から10年まで芸術アドバイザーと首席客演指揮者を務めたギュンター・ヘルビヒのもとで、プロジェクト「Call for Score」をスタート。
これは新作の委嘱や初演という形で台湾出身の現代作曲家の作品の普及を目指すものです。
この活動は09年から進められているCD録音シリーズ・プロジェクト「The Voices of Taiwan」にも反映されており、8枚目となる最新の録音(12年6月に台湾でリリース)には錢南章 Chien Nan-Chang の管弦楽と声楽のための作品が収録されています。
♪LISTEN♪ ⇒ こちらで過去の「The Voices of Taiwan」を試聴できます
◆他ジャンルとのコラボレーションも!◆
近年、フィルハーモニア台湾は演劇や現代舞踊との交流にも積極的です。
世界で人気沸騰中のコンテンポラリー・ダンス集団「雲門舞集」(クラウドゲート・カンパニー)の創設者で振付家の林懐民Lin Hwai-Min、
「表演工作坊」(PWSHOP/パフォーマンス・ワークショップ)の創設者で同カンパニー監督の頼声川Stanly Lai、
映像アーティストのクラウス・オーベルマイアー、
そしてフランスの舞台作家ルーカス・ヘムレブ、ジュリエット・デシャンら、世界の芸術シーンをリードするアーティストたちとの華麗なるコラボレーションが実現しています。
・・・既成の枠にとらわれることなく、アクティヴかつクリエイティヴな活動を展開しているフィルハーモニア台湾。
次回の連載では、波にのるフィルハーモニア台湾を音楽監督として率いる天才指揮者、リュウ・シャオチャの魅力を徹底解剖してみたいと思います。お楽しみに。
*フィルハーモニア台湾 来日公演*
日時 2012年11月9日 (金) 19:00 開演 (18:30 開場)
会場 東京オペラシティ コンサートホール
出演
オーケストラ: フィルハーモニア台湾
指揮: リュウ・シャオチャ
ピアノ: 萩原 麻未
料金
S¥7,000 A¥5,000 B¥3,000
プログラム
チャイコフスキー: 幻想序曲「ロミオとジュリエット」
グリーグ: ピアノ協奏曲 イ短調 op.16
ドヴォルザーク: 交響曲第9番 ホ短調 op.95 「新世界より」
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2012.10.04