
**公演レビュー**
ベルナルト・ハイティンク/マリア・ジョアン・ピリス/LSO
パリ:サル・プレイエル/2012年6月
<曲目>
パーセル : シャコンヌ ト短調 Z.730(弦楽合奏版)
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K. 488
シューベルト:交響曲第9番ハ長調 D.944
(略)オランダが生んだ巨匠ハイティンクとLSOの華麗なるコラボレーションはパリジャンにとってもう御馴染みである。今からちょうど一年前には、このコンビでサル・プレイエルにてモーツァルト/ブルックナー・プロが披露された。今回の短期間の“来仏”の第二夜に当たるこの日は、“ザルツブルクっ子”[モーツァルト]が再び取り上げられ、締めにシューベルトの交響曲が用意された。
“前菜”は(略)短くも実に美しいパーセルの「シャコンヌ」(弦楽合奏版)。見たところ体調万全のハイティンクは、すぐさま音量、正確さ、洗練の面から弦楽器群を輝かせていく。4人のコントラバス奏者を含む約40名からなる弦楽オケという編成は、パーセルの原曲に(略)バーバーの「アダージョ」にも匹敵するアクセントを与え、聴き手をバロック音楽の美学から大いに遠ざける。それにしても、なんと豊かな表現力!
(略)続いて、ピリスがモーツァルトの協奏曲第23番で登場した。舞台に姿を見せるなり喝采に包まれたポルトガル生まれのピリスは、既にLSOと幾度も共演している。去年のモーツァルトではハイティンクの指揮。ガーディナーの指揮でベートーヴェンを弾いたこともある。この日ピリスは、史上最も美しいピアノ協奏曲ともいえる第23番の演奏のひとつの模範を示した。各フレーズの表現がきちんと練られているため、アポジャトゥーラが付されたり、テンポが遅められたりし、同じメロディが同様に奏でられることは一度たりともない。それが明々自白なものとして自然に行われる。一方、ハイティンクは楽譜をありのまま受け止め、オケを軽やかに、そして的確に導いていく。彼の解釈は非常に古典的で、バロック的な側面には決して惹かれていこうとはせずに、澄んだ流動的な音楽の流れを際立たせる。しかし、期待されたアダージョ楽章には殆ど心動かされなかった。おそらくはソリストの若干の焦りゆえだろう。とはいえ残りの2つの楽章、とりわけ活気に満ちたアレグロ・アッサイは完璧なものだった(略)。
シューベルトの「ザ・グレート」は長年、シンフォニー・オーケストラの十八番である。ここ最近、パリでもマズア(シャンゼリゼ劇場)、フィッシャー(サル・プレイエル/ブダペスト管)、ビシュコフ(シテ・ド・ラ・ムジーク/ヨーロッパ室内管)の指揮で演奏が相次いでいるのは偶然ではない。ハイティンク自身も、首席指揮者を務めるシカゴ響との共演を筆頭に、この作品の指揮を何度も経験している(略)…。
公演の最後には、生き生きとした拍手がハイティンクを包んだ――彼は常にここフランスでの公演を待ち望まれている。サル・プレイエルへのLSOの次回の登場は次シーズンで、燃えたぎるゲルギエフの指揮による期待のブラームス/シマノフスキ・プロ等が予定されている。
(Sébastien Gauthier)
原文 http://www.concertonet.com/scripts/review.php?ID_review=8526
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2012.06.27
2012.07.10